心の中の深層構造

 企業がコモディティ化した市場から脱却しようと思い、製品開発に取り組む場合、1)新しい需要を掘り起こすこと、2)その製品に対する需要に顧客自身が気づいていなかったこと、3)市場導入後に、思いもよらない価値が見出されていることである。そして顧客自身ですら気づいていないニーズを顕在化させるため、潜在意識や無意識のレベルに迫ることである。

 消費者の深層心理とは、顕在意識、無意識、潜在意識によって構成され、その中の顕在意識とは「意識的で合理的領域に属し、物事の推移を知覚しており、そのわけを自分の言葉で表現することができる」意識であり、潜在意識とは「自分の感情や感覚、態度などで、何が起きているかぼんやりとは解るが、自分では言葉にだす気になれない」意識である。

 また、無意識とは「本当の自分態度や、感情に気づいていない、話し合っても話したくない」意識であるとされている。このように人間の意識は、顕在意識、無意識、潜在意識という層構造に分けて捉えようとしているのが、深層心理学の特徴である。心を階層的に捉えると同時に、それらの各意識の構成比についても議論が進められているところである。

 これによると、潜在意識・無意識的な行動が人間の行動の95%を占めている説もあり、人間が行動を起こしたり、起こさなかったりするのは、人がはっきりと気づいていない潜在意識や無意識への依存が大きいとも言われている。このような考え方によれば、顕在意識と比較して、潜在意識・無意識が人間の意思決定に与える影響は極めて大きいといえる。

 そうだとすると、これまでのマーケティング調査や研究で対象としてきた領域は、この意識の中のたった5%に過ぎない顕在意識でしかなかったということになるから、選択式のアンケートで消費者に直接理由を尋ねたとしても、その答えは正確ではなかったのではと疑ってみる必要がある。しかしながら、現在もアンケートによる調査は多用されている。

 その理由は、この質問方式は、被験者の自己評価による回答を集計するものであり、調査の実施や集計・分析が比較的容易であるというメリットがあるからである。たいていの人は、自分の行動の原因をよく知らない場合でも、直接質問を受けると、もっともらしい回答をしてしまう。場合によっては自分の主観や願望の影響が大きく反映する場合もある。