コミュニティーを築けるかどうかは、リーダーが何をするかだけでなく、それをどう行うかに左右される。メンバーと一緒に仕事をしたり、メンバーに敬意を払ったりするといった、リーダーのあらゆる行動から、生態系を築くこと、生態系のルールを作ること、ルールを守らせることによって、コミュニティー意識は育まれもすれば、壊れたりもする。
目的と価値観を共有しているというコミュニティー意識は大変重要なものであるだけでなく、たいへん壊れやすいものでもある。複雑になる一方の現代の問題に対処できる生態系をどのように築けばいいのかは、著者たちもまだ解明できないと述べている。しかし、スマーとシャルマン、そしてその他の事例からいえることが、ふたつあると指摘している。
一つは、共通の目的と価値観と参加規則のもとにひとつにまとまっているというコミュニティー意識がなければ、イノベーションの生態系は長続きしないということ。もうひとつは、リーダーがそのことを理解して、コミュニティー意識を育むことに真剣に取り組まなければ、イノベーションの生態系は単に協力し合うだけのグループにしかならず、大きな問題を解決できるコミュニティーにならないということである。
著者たちが、繰り返し強調してきたことは、多くの組織では、イノベーションを繰り返せるようになるためには、リーダーシップについての先入観をあらためる必要があるということである。イノベーションのリーダーの役割は、メンバーに進むべき方向を示して引っ張ることを自分の役割とは考えていない。メンバーがイノベーションを生み出そうとする意欲をかきたてられ、なおかつ実際にイノベーションを生み出せる環境を築くことがリーダーの役割だと考えている。
それでは、未来のインベーションのリーダーはどこにいるのか?リーダーは生まれるものというよりは、育つるものである。したがってイノベーションのリーダーを得たいのであれば、そういう才能のある人を見つけて、必要な経験を積ませ、資源を与え、イノベーションに求められる考え方やスキルを身につけさせなくてはならないか、それは難しい。