CaLit2で築かれたコミュニティー(合意その1)

 CaLit2では、コミュニティーを築く作業は正式な発足前から始まっていた。カリフォルニア大学の二校の工学部の学部長は、まだスマーに所長への就任を打診している段階で、サンディエゴ校とパイン校の研究者に声をかけて、様々な分野の専門家に集まってもらい、CaLit2をどのような組織にし、どのように運営するかを話し合っていた。

 まず、最初の重要なステップは、CaLit2が重点を置く分野を決めることだった。それは「環境と公共のインフラ」「高度交通システム」「デジタル技術によるゲノム医療」「新しいメディア芸術」の4つである。重点分野が重要なのは、「21世紀の世界で、技術イノベーションの最先端を進む役割の維持、拡大」という壮大なミッションだったからである。

 しかし、そのままでは漠然としすぎていて、研究者の関心を引くことができなかった。CaLit2を成功させるには、興味のあることについて本物の研究をすることにしか興味のない研究者達の心をつかめるよう、このミッションをもっと具体的な分野名に書き換える必要があったが、これで大きなミッションと研究者の興味を結び付る目的が定まった。

 ここの試みは、「適切な人を見つけて、集まってもらい、皆で共通の目的を考える」機会になった。そして共通の目的が、活気あふれるコミュニティーの土台になったという。準備段階からリーダーとして関わったことは、スマーにとって大変大きな意味を持った。スマーには教員陣にCaLit2への協力や参加を求める正式な権限がなかったからである。

 権限のないスマーは、大学の既存システムのなかで、既得権益も尊重しながら、仕事を進めなくてはいけなかった。教員がCaLit2に参加しても、その研究室は各学部に置かれたままだった。CaLit2は教員たちを何らかの役割に任命することはできなかったし、教員の昇進審査は学部の専権事項だった。最終権限はつねに教員に委ねられていた。

 スマーとCaLit2は、必要なツールや資源を提供し、実りあるコラボレーションのために人を集め、世界中の諸機関との橋渡しをした。CaLit2の役割は、様々な分野の人が集まって、イノベーションに取り組める場を築くことであった。その場で行われることに対して口出しをしなかった。「CaLit2のためになることはすべて、教員のためにもならなくてはならない」というサンティエゴ校学部長の提唱を守ったものである。