CaLit2(カルフォルニア通信情報研究所)やPLA(法律事務所のネットワーク)はどのようにして何年も存続し、成功を収めたのか著者たちも決定的な答えは解っていないという。しかし、いくつかその見解を示している。まず確かなことは、スマーとシャルマンはそれぞれの経験を通じて、確固たる統治の構造が重要だということに気づいていた。
複数の独立した組織がコラボレーションに取り組むときには、境界線と役割、手順の標準化...仕事の進め方の規定を明確にすることが、いっそう重要になる。また、当然、その生態系には業務の遂行を支えるインフラやコラボレーションとイノベーションを助けるツールも必要である。しかし、二人が一番苦労したのは、単に能力を築くことより、意欲を引き出すことだった。
二人とも、競合関係にあったりする個人や集団から、生態系のなかで協力し合おうとする意欲を引き出すことに何よりも骨を折った。同一の組織内のグループであれば、少なくても基本的なつながり(事務所や研究機関)は初めからあるが、生態系のなかのメンバーどうしにはそれがない。生態系では、複雑さは避けられず、対立が生じる可能性も高い。
そうするとリーダーは当然ながら、まずは形式的な手法で、構造と統治を図る。つまり、メンバーとの関係や、互いの権利や、誰が何をし何を決めるかのルールを、明確に定めようとする。そのような面を考慮するのは間違ってはいないが、それが第一になったりするのはよくない。なぜなら、イノベーションは本来、自発的なものであるということである。
したがって、何よりも最初にメンバーがイノベーションに取り組もうという意欲を起こさなくてはならない。コラボレーションと発見型の学習と統合的な決定という労の多い作業にみずから積極的に取り組まなくてはならない。同一の組織内でのイノベーションについてそう言えるなら、さまざまな組織からなる生態系は、なおさらそういえるはずである。
つまり、価値ある取り組みに参加している意識、共通の価値観のもとに共通の目的を追い求めている意識を持つことである。この社会的な絆がなければ、生態系は成果を上げられるほど長続きしない。CaLit2とPLAでは、リーダーたちがこの生態系の現実を理解し、その維持に欠かせない社会的な絆を育むことに力を尽くした。ルールや構造は必要だが、それだけではコミュニティーの中に常にある、崩壊に向かおうとする力を押しとどめることはできない。