統合のための場を作る

 職位ごとに仕事が厳密に定まっていたり、規則や方針や手順がむやみに多かったり、組織の序列が硬直化していたりする企業では、職務にしばられない発想やコミュニケーションが妨げられるので、アイディアの統合は行われにくいる。一方、イノベーションに長けたリーダーは、どのような形の構造も、コラボレーションによる発見や創造的な解決のプロセスを後押しするための柔軟なツールだと捉えている。

 グーグルのインフラストラクチャ部門のストレージチームはまさにその例である。ストレージチームは新しいシステムや製品の開発を第一の任務としながらも、その時々のニーズに応じて柔軟に結成されたり、解放されたりした。著者たちが調査したリーダーの多くは、規則を作りすぎることを嫌った。カフラン同様、基本的にはすべて部下の判断に任せ、必要な時だけ介入するスタイルだった。

 序列のような公式の構造に頼っていてメンバーを管理しようとせず、非公式の社会的な構造(共有された価値観、基準、人脈、同僚からのプレッシャーなど)を利用した。その方がたいていの場合、効果的だったからだ。必要に応じてチームを再編成したり、メンバーの任務を変更したり、あるいは問題を解決するためにメンバーの席を変えたりもした。

 要するに、構造をツールと見なしていたわけである。構造はあくまでも目的を達成するための手段であり、目標達成後まで存続するべきものではなかったということだ。そして、リーダーたちは、物理的な職場環境にも大変気を配っていた。そのなかでも重視されたのは、社内のあらゆる部門の人たちが交流できるよう、共有スペースを設けることである。

 また、レイアウトを変えやすいつくりにもなっていた。メンバーが動き回ったり、直接向かい合って仕事をしたりできるよう、備品には移動可能なタイプが使われていた。テクノロジーの面でも、ソーシャルメディアの環境からあらゆる交流の手段まで、従業員同士のつながりを深めるためのものが整備されていて、中核プロジェクトに複数の部門が一箇所に仕事に取り組んだ。

新しく有益なものをチームで生み出そうとするとき、組織の三つの能力(創造的摩擦、創造的敏速さ、創造的解決)がどのように連動し合うか、また、この能力を育む上で、イノベーションの意欲を生み出す三要素(目的、価値観、参加意識)に基づいたコミュニティー意識がいかに大切かはっきりと示せた。これら三つの能力がチームに十分に備わり、発揮されるようにするのが、イノベーションのリーダーの役割である。