最善の解決策が生まれるのは、チームが「どちらか一方」ではなく、「どちらも両方」という発想をするとき、早い段階でアイディアを一つに絞り込まず、状況が複雑になっても、数多くのアイディアを抱え続けるときである。イノベーションのリーダーはコミュニティーの慣行、価値観、構造、参加規則を通じて、統合的な決定を後押し続ける必要がある。
複数のアイディアを抱え続けるには、「対向性頭脳」が必要である。この能力に秀でたリーダーやチームは、「二つの対立するアイディアを同時に扱うことができる」。だから「慌てたり、どちらか一方を選んで安心したりしようとせず」二つのアイディアを組み合わせて、より優れた第三のアイディアにたどり着ける。この考え方を知れば、創造的な統合が稀であるかの理由もわかる。
個人も集団も、いくつかのアイディアがある複雑な状況では、不安を覚えやすく、メンバーはその緊張に耐えられず、直ちに状況を単純化しようとする。夫々のアイディアを単純化し、別々に扱い、一つか二つのアイディア以外捨て去ろうとする。チームのメンバーに、常に全体を考えよ、単純化や絞り込みをしばらく我慢せよと求めるのは、宙ぶらりんの緊張状態のなかにあえて身を置けと求めるのと同じことである。
このような要求を貫こうとするリーダーは、メンバーからの反発を覚悟しなければならない。それは、一般にリーダーに期待されている役割とは違うからである。普通、リーダーの役割とは、状況を明確にし、指示を出すことだと考えられている。例え一時的にせよ、混乱を認めたり、奨励したりすることではなく、速やかに選定して決定を下すことである。
本物のリーダーシップを発揮してくれる人とは、このように判断を先延ばしにしない人、今求められている本物のリーダーとはそういう人である。リーダー自らも、自分の役割をそのようなものだと思っている。ビションを描くことに慣れ、誰よりも先見の明と洞察力に富み、いつでも大胆な行動を起こせる人物として振る舞おうと思っているはずである。
しかし、統合的決定では、個人が栄光に浴したり、勝利の喜びを味わったりすることはない。個人的な達成感もあまりない。統合的な決定がうまく行っているときほど、解決策を最初に提案した者は思い出されにくい。ましてや誰の手柄かなど、もっとわからない。そこではアイディアはどこからともなく生まれてくる。気がついたらそこにあったと、後から振り返るメンバーが多い。