このバランスがイノベーションを促進することになることは確かである。すなわち、どちらか一方に偏りすぎると、イノベーションは妨げられるため、イノベーションのリーダーは、新しいアイディアを育むとともに最終的な成果をあげられる絶妙なバランスを見極めなくてはならない。カフランのジレンマ(根気か、切迫感か)もそこにあったのである。
二チームにアイディアを発展させるための時間を与える一方で、グーグルの差し迫った要求にできるかぎり早く応じられるよう、チームを急がせる必要もあった。つまり、このパラドックスは、現場主導か、トップダウンの指示かという問題でもある。イノベーションは普通、現場主導で生まれ、惹きつけられ、そのアイディアを実現させる努力が始まる。
失敗を通じて学習し、次第にアイディアの実現に近づいていく。しかし、従業員が完全に無計画で、いつも成り行きにまかせて働いていたら、企業は生き残れない。ある程度の制約を課すことや、ある程度の指示を出すことは必要である。しかし「ある程度」とはどれ位なのか?どこまで発案者にアイディアを発展させ、どこから介入すればいいのか?
カフランがこのようなジレンマに見舞われたのは、最終的には二チームのアイディアのどちらか一方しか採用できなかったからである。しかし、カフランはどちらのアイディアも無駄にしたくなかった。そこでそれらのアイディアをグーグルの長期的なストレージ戦略の中に組み込む方法を考えた。だが優れた解決策は自然には生まれてくるものではない。
様々なアイディアや選択肢や代替案を検討し、失敗や間違いを経験し、それらの新しい組み合わせ方を考えることで、最善の解決策がはじめて見つかる。大局から問題を眺めて、色々な見方やアイディアを統合することがイノベーションに欠かせないプロセスである。著者たちが調査したリーダーたちは、みなそのプロセスに特別に注意を払っていたという。