統合的な決定を支える

 チーム内で意見の不一致や選択肢の対立、あるいは何らかの問題が発生したとき、その対処のしかたは、三通りある。一つは、リーダーの決定にみんなが従う。もう一つは、お互いに譲歩して妥協案を探る。しかし、これらの対処では、満足できる解決策は生まれにくい。最善の改善策が見つかりやすいのは、アイディアの統合という第三の対処法である。

 つまり、A案とB案を足して、両案より優れたC案を創ることである。そうすれば、はじめは対立しているように見えたアイディアを組み合わせて一つにすることができる。これは差異や対立を受け入れて、最善の解決策を見出そうとする方法である。リーダーに下駄を預けたり、妥協したりするのは、問題を先送りするだけで本質的な解決には至らない。

 アルベルト・アインシュタインは、「新しい問をたてたり、新しい可能性を考えたり、古い問題を新しい角度から眺めたりするには、独創的な想像力が求められます。科学の本当の進歩はそこから生まれます」と言っている。彼にとってはイノベーションとは「組み合わせの科学」であり、「アイディアでも、未熟な考えでも、能力でも、概念でも、なんでもすでにあるものをもう一度、組み合わせなおしてみること」であった。

 「多くのものの新しさは、その組み合わせの新しさのなかにあるのだ」。革新的な組織やリーダーは、単に統合的な決定を許すだけでなく、積極的に組み合わせ直すことを奨励している。対立する案であっても、できるだけ長く留めておき、検討を重ねる。十分時間をかけて議論し、試行錯誤を繰り返すことではじめて、有益な統合が可能になるからである。

 そうはいうものの、一方では時間や予算面での制約もあることは否めないであろう。しかし、それはあくまで内向きの議論に過ぎない。そもそもなぜアイディアが必要なのかと言えば、そのアイディアの付加価値を評価するのは組織の外にいる人々である。そこを起点に考えることのできるリーダーこそ本物であり、統合的決定の要ということなのだろう。

 すなわち、安易な譲歩や妥協からは、欠点が少ないとか、感情的なわだかまりを残さないためとか、消極的で次元の低い解決策しか生まれないからである。このことをメンバーのだれもが熟知し、役職や職位などに囚われることなく、問題解決に向かって自由に意見をかわすことのできる文化を作り上げられるのが、イノベーションのリーダーなのである。