イノベーションに適した場とは、メンバーの様々な天才の一片を引き出して、組み合わせ、一つの集合天才にできる場である。そのためには、リーダーにはコラボレーション、発見型の学習、統合的な意思決定という三つのスキルが重要であると強調している。その根拠は、一人の天才の閃きからイノベーションが生まれるという誤解が根強いことにある。
また、ビジョンを描くのがリーダーの第一の役目であるという誤った考え方も問題にしている。しかし、イノベーションがどのように生まれるかを正しく理解しているリーダーであっても、イノベーションを導くことは容易ではない。それは、コラボレーション、発見型の学習、統合的な意思決定という、不慣れで面倒な要素を実践する必要があるからだ。
これを実践するためには、リーダーとメンバー全員が、知的にも精神的にも、大変な負担を強いられる。したがって、相当の覚悟と忍耐が必要になる。これが、なぜほとんどの企業は創造的に問題を解決できないのかという理由である。すなわち、イノベーションが難しいのは、そこには必ずパラドックスがあり、これをどのように乗り越えるかである。
パラドックスとは、矛盾しているように見えて、実は真実である説のことであり、例えば、「成功するためには、じっくり考え、なおかつすばやく行動する」である。これは一見不可能なことのように思われるが、実はこれは正しいことである。裁判では「真実の見極め」と「迅速性」が同時に満たされていなければ、意味がなくなるのと同じ理屈である。
イノベーションの場合には、個人の才能を解放し、なおかつ、最終的にはそれらの才能を組織に役立つようにひとつにまとめて、活用しなくてはならない。「解放」とは、いかにアイディアや選択肢を引き出せるかであり、「活用」とは、いかにそれらのアイディアや選択肢をひとつの最終的な解決策に変えられるかを意味する。これは正しく至難な業である。