完成した作品のシンプルな統一性と、完成までの複雑なプロセスとの間にある落差に、組織でイノベーションに取り組むときの最大の課題があると著者は述べている。それはすなわち、メンバー全員からもたらされる多種多様な天才の一片を一つに纏めて、いかに統一された集合天才を生み出すか。これを繰り返し行えるのが革新的企業たるゆえんである。
もちろん個人の才能は重要であるが、どれだけ創造的な人材を見つけられるかではない。むしろ、そうした人材を見つけ、手放さないことに力を入れ、同じ人材を継続的に雇用し、様々な制作に携わらせることである。才能豊かな人材をどのようにして生産的に協働させるかということの方がはるかに難題だからである。これを担うのがリーダーの仕事である。
そこで、筆者たちが調査したリーダーは、「コラボレーション」「発見型の学習」「統合的な決定」の三つが組織を築くことに腐心していると指摘している。新しくて有益なものを創造しようとする組織において、これら三つの組織運営のスキルがいかに絡み合って、どんな効果をもたらしているかを観察した結果、一つのフレームワークが生まれたという。
そこで、まず初めに取り上げるのが、コラボレーションのできる組織を築くことについてである。イノベーションに対する誤解は根強く、未だに単独の行為だとか、創造的な一瞬のひらめきだとか、天才の専売特許だというイメージが持たれている。しかし独創的なイノベーションの背後には必ず、長くて複雑なプロセスがあることは殆ど知られていない。
例えば、アメリカ最大の発明家と言われるトーマス・エジソンは、創造性に富んだ頭脳により、電球や蓄音機をはじめ1000を超える特許品を生み出したが、数々の発明は独力でなされたわけではない。多くの人が指摘しているように、エジソンの最大の功績は職人集団の工房を作ったことである。これがチームでイノベーションに取り組む組織に変貌した。
イノベーションのプロセスにはコラボレーションが欠かせない。何故ならば、イノベーションがもっとも生まれやすいのは、専門や経験、視点の異なる様々な人々の間でアイディアが交換されるときだからだという。確かに一瞬の閃きに助けられることもあるが、そのアイディアにしても他のメンバーのコラボレーションの中から生まれ、役立てられる。