イノベーションを導くリーダー

  リーダーシップとは、一人のリーダーがどこを目指すかというビジョンを示し、これを実現するため先頭に立って指揮するというのが、これまでのリーダー像であった。しかし、どこへ向かうのかわからない創造的な活動においては、これまで優れているとされてきたリーダーシップでは通用しない。ビジョンを掲げるだけではインベーションは起こせない。

現代企業において、画期的な商品を生み出すには、一人の天才では不可能であり、様々な人材を活用する集合的なプロセスが必要である。メンバーの才能を結集し、集団の力を最大化させるためには、自らが先頭に立ち指揮するのではなく、「背後から指揮する」という新しいタイプのリーダーシップ求められる。それは「羊飼い」のような存在だという。

こうした考え方は、「ハーバード流 逆転のリーダーシップ:リンダ・ヒル、グレッグ・ブランドー、エミリー・トゥルーラブ、ケント・ラインバック著、黒輪篤嗣訳」で研究成果が紹介されている。ここで取り上げているのは、これまで語りつくされてきた、イノベーションやリーダーシップについてではなく、リーダーシップとイノベーションである。

すなわち、従来のように、「できるリーダー」であればイノベーションの面でも有能なリーダーであるに違いないという思い込みを否定しているところが斬新である。研究は、映画や電子商取引、自動車製造、専門サービス、ハイテク、高級ブランドまで、様々な産業分野におよび、世界中の優れたリーダーや同僚など12人へ取材するという形で行われた。

対象者たちは、イノベーションの本質や仕組みをよく理解していて、命令やひとくくりの力ではイノベーションを成し遂げられないことを承知していたということである。このように調査対象は多岐にわたったが、インベーションにおけるリーダーの役割に関しては、驚くほど誰もが同じ考えを持っていたことだという。それは、次のような考え方である。

ビジョンを描いて、イノベーションが自然に生まれるのを待つのではなく、メンバーが苦労をいとわずイノベーションを生み出そうという気持ちになり、なおかつ実際にイノベーションを生み出せる場...あるいは条件、環境...を築くことが、イノベーションを導くリーダーに求められている。つまり、リーダーの仕事は仕事の舞台を用意することである。