サーバント・リーダーシップの実践

 サーバント・リーダーに求められている能力は、「モチベーション」「マインドセット」「影響力の根拠」「コミュニケーションのスタイル」「業務遂行能力」「成長についての考え方」「責任ついての考え方」などでる。しかし、実際にフォロワーの成長を促し、組織の発展に努めるためには、これらを実践するための活用能力が必要であることもまた事実である。

 この実戦能力について、グリーンリーフセンター・アメリカ本部長を務めたラリー・スピアーズは、以下に示す、10項目のサーバント・リーダーシップの属性を提唱している。まず、フォロワーの声に対して虚心坦懐に耳を傾けることである。そして、意見の違いがあっても即座に反論したりせず、フォロワーの気持ちを理解し共感することが肝要である。

フォロワーを支える意味においては、時には癒しも必要である。フォロワーが精神的に落ち込んでしまっているようなときは、相手の心に寄り添うことで立ち直りを手助けする。といっても、単に慰めるというのではなく、あくまでも、本人の立ち直る力を信じ、仕事への気づきを誘う。つまり、伝えたいことをストレートに伝えるのではなく気づきを誘う。

また、職務階層からいえば、上位者は下位者に対して指示命令を一元的に伝達する組織原則に制約される面がある。そうした場合でも、フォロワーとの双方向のコミュニケーションを重視し、仕事の理解を促すという鉄則を忘れてはならない。説得というと、一般的には、半ば強制的に理解するよう押し付けるというイメージがあるか、それとは別である。

気づきや説得といっても、言葉だけではよく伝わらないことがある。こうした場合、図や計算式を示して、フォロワーの心に一つの概念として描かれるように説明する必要も生じてくる。この場合に目指しているのは、いわゆる暗黙知を形式にすること意味する。さらには、先見力や予見力により今後の見通しを示すとこで、信頼関係をより強固にする。

フォロワーの成長に関わり、これを支援する立場にある執事役としてのサーバント・リーダーは、結局のところ、組織内にコミュニティーをつくり、相互の信頼関係に基づく協働関係を構築するのが最大の役割である。ということは、やはりこれらの能力は保有能力であると同時に、発揮能力という面が強いと理解すべきであるということになるであろう。