サーバント・リーダーに求められる能力

  サーバント・リーダーに求められるものは、第一に、組織の目的を実現するために、フォロワーの気持ちを高めるモチベーションをもっていることである。つまり、支配力に基づいたリーダーシップではなく、組織の地位にかかわらず、目的を実現するため、フォロワーに奉仕することで、意識を盛り上げていきたいという意欲が備わっていることである。

 第二に、組織に参加する人々が協力して目的を達成する環境で、ウィン・ウィンの関係を重視する心構え(マインドセット)である。サーバントは「奉仕する」という意味ではあるが、奉仕する側の一方的な自己犠牲によって成り立つというものではなく、奉仕する側、奉仕される側の両者に何らかの得るものがあって、初めて成り立つ関係のことである。

 第三に、部下との信頼関係をいかにして築き、フォロワーの自主性を尊重することで組織を動かすかという影響力の根拠を自分中に持っているかである。職位に基づいた権力の下で発揮されるリーダーシップは、フォロワーに真の動機づけを促すことはできない。リーダーとフォロワーの間に信頼関係があれば、自主性に任せたエンパワーメントが行える。

 第四は、コミュニケーションのスタイルである。これにはフォロワーとの双方向のコミュニケーションが前提で、まず、部下の話を傾聴するという姿勢が求められる。フォロワーの意見に耳を傾けることにより、誤解に気づいたり、新しい発想が生まれることは日常生活のなかでもよくあることであるが、奉仕の精神を実践するということの中身でもある。

 第五に、業務遂行能力をいかに高めていくかという能力である。ある程度は、従来型のリーダーシップの方が手っ取り早い面もあるかもしれないが、フォロワーの活動をサポートすることで、業務遂行能力を高めていくことの方が、組織にとってもフォロワーにとっても有効な手段である。こうした考えは、コーチングやメンタリングの思想とも整合する。

 第六は、成長についての考え方についてである。これまで、人のモチベーションと組織の目標達成について多くの研究がなされてきたが、やはり、個人のベクトルと組織の目指している方向が同じでないと、組織は活性化しないことが明らかになっている。すなわち、ここで言っている成長とは、組織目標をメンバーが共有し、調和することを重視している。

 第七に、責任についての考え方についてである。責任は、組織の階層が上位になればなるほど重くなる。組織としては、もちろん問題を発生させないことが理想ではあるが、これを100%避けることはできない。もしも、問題が発生した場合、サーバント・リーダーは、権限はフォロワーに委譲しても、責任は自分がとるという明確な姿勢を示すべきである。