サーバント・リーダーシップ

 サーバント・リーダーシップとは、「まず相手に奉仕し、その後相手を導くもの」と定義されているもので、アメリカのロバート・グリーンリーフが提唱したリーダーシップ哲学である。従来の支配型リーダーシップでは、組織の先頭に立ち、フォロワーを目標達成に向けて引き上げるというイメージがあったが、フォロワーに奉仕する精神を説いている。

 その特徴は、第一に、リーダーはフォロワーに対して引っぱりあげるという気持ちよりも、まず、フォロワーに対して奉仕したい、つくしたいという気持ちが最初にくる。そして、そうした気持ちでフォロワーと接することを通じて、やがて、望ましい方向に導いていきたいという気持ちが湧いてくる。つまり、導くよりもまず奉仕することを先行させる。

 第二に、サーバント・リーダーシップは、地位や権力に基づいてパワーに訴える行動ではなく、奉仕の精神に基づいてフォロワーの気持ちを慮る行動であるということである。といっても、パワーを行使しながら奉仕するということではなく、あくまでも、奉仕したいという気持ちが先でなければならないということで、形だけの奉仕では意味をなさない。

 第三にサーバント・リーダーシップを発揮するということは、単にリーダーがフォロワーを気遣ってなす行動だけではなく、フォロワーが組織の目的達成に向けて献身的に行動するようにしなければならない。そして、そのことが将来的に、サーバント・リーダーシップを発揮しようという心構えを持つように、フォロワーの成長を促すことに繋げていく。

 しかし、このように奉仕の精神を先行させる行為では、フォロワーを統制することはできないのではないか、という反論もあるかもしれない。特に日本人は、どちらかというと、上に戴くものがないと、自主的に行動することを不安がる人もいる。しかし、こうした服従型のフォロワーは、不満がないのかというとそうではなく、単に消極的なだけである。

 報酬的パワーや権力に基づいて発揮されるリーダーシップは、フォロワーを盲目に服従させ、従わなければ罰則を適用するというものであるから、フォロワーを動機づける源泉にはなりにくい。逆に言うと、リーダーの指示に従っていれば、罰を受ける心配がないという受動的な行動規範が出来上がってしまい、指示されたこと以外はしないようになる。