優れたリーダーの特性

 日常的な業務における生産性や効率性を追求するのもリーダーシップには違いないが、組織のミッションや経営理念に基づいてビジョンを設定し、それを実現するための戦略をデザインし、推進するにあたって、必ずと言っていいほど環境変化に直面する。この場合に、求められるのが変革型リーダーシップであり、そのリーダーには共通した特性がある。

 ウォレン・ベニス教授によれば、その特性とは、1)人を引きつけるビジョンを描く、2)あらゆる方法で「意味」を伝える、3)「ポジショニング」で信頼を勝ち取る、4)自己を創造的に活かす、の4点である。これらは、いずれもリーダーに求められる資質ではなく、あくまでも行動特性であるということは、変革型リーダーシップ論に共通した考え方である。

 上記の特性のうち、「人を引き付けるビジョンを描く」とは、どのようなことなのだろうか。ビジョンは、ミッションや経営理念を基軸に設定されるものであり、いわば、これらをより具体化した目標であるから、環境が変化したとしても、その基本は簡単に揺らぐものではないが、ビジョンは環境変化に対応して、時には斬新なビション設定が必要となる。

 ビジョンを再構築するには、「過去」「現在」「未来」という時間軸で考えるのが有効であるという。過去については、これまでの組織の歩み、組織の強み弱み、経験から導き出された教訓、ライバル組織などの歴史といったビジネスに直結したものばかりではなく、歴史上の人物や出来事などからも、ビジョン構築に参考になる情報が得られるはずである。

 次に、現在からは、身の回りで起こっている出来事、現状の課題、組織周辺や内部の環境変化など、そして、未来については、政府が打ち出そうと検討している政策、経済予測・人口動態予測、業界展望、技術革新・社会の展望などを垣間見ることができる。つまり、未来は予測が難しいが、将来に向けての過去や現在の意思決定により規定される面もある。

 もちろん、こうした時間軸を基準にビジョンを構築するためには、環境変化に対応できる先見力や洞察力、世界観、立体認識(多次元で課題を捉え分析する能力)、組織の周辺環境、ライバル組織や利害関係者の動向などを把握する視野の広さ、ビジョンを再構築するために必要な柔軟な姿勢といったグローバルな考え方が培われていることが不可欠である。