カリスマ的リーダーシップの行動特性

  確かに、カリスマ的リーダーシップは、これに相応しい資質を備えているか、という点から見ると、その資質を明確に表現するのは難しい。その点ではカリスマ的支配とは明らかに異なる。しかし、行動特性という面では、カリスマ的リーダーシップを説明することはできそうである。その行動特性について、コンガーとカヌンゴは次のように述べている。

 1)カリスマ的リーダーシップの第一の行動特性は、魅力的なビジョンを構想し、それを組織内に打ち出していくことである。その点では、変革型リーダーシップと似ているが、「変化を促す」というメッセージを示すことに重点を置いている。つまり、環境変化の不確実性を先取りして、素早く適応することで状況を打開する方策を打ち出すという行動である。

 2)そのためには、取り巻く環境の変化を察知し、今後の見通しを立てる能力がなければならない。その点では、行動特性の源流となる「先を見通す能力」が求められているのかもしれない。ただし、その能力があるだけでは不十分で、「変革すべきところはどこか」「なぜ変革しなければならないのか」「変革した後はどうなるのか」を示せるかどうかである。

 3)こうした行動は、これまでの組織に変革を迫るものであるから、常識や型にとらわれない行動ということである。すなわち、変化を読み取り仮説思考で挑める推進力が必要であり、その姿勢と行動がフォロワーからカリスマ的リーダーシップと評価されることになるわけであるが、同時に不確実な要素も多いという状況を考えれば、かなりの冒険でもある。

 4)先行き不透明なところに、ビジョンを示し、その実現のためにあえて非常識とも思える行動をとるというカリスマ的リーダーシップの心理的背景は、「何かが起きれば、責任は全て自分にある」というリスクをとる覚悟が存在する。その責任をとる覚悟をメッセージとしてフォロワーに示すという点で、通常のリーダーとは異なるという評価が生まれてくる。

 5)組織に変革をもたらすためには、どんなにカリスマ的リーダーシップを発揮しても、フォロワーの意識が変わらなければ空回りに終わってしまう。そのため、リーダーはフォロワーに向ってメッセージを送り続けるわけであるが、単なる心意気を示しただけでは不十分であり、フォロワーの許容量にも配慮して変革意識を促すことも欠かすことはできない。

 6)そして、カリスマ的リーダーシップに求められるものは、絶えざる革新を常に意識する取り組み姿勢である。現状に満足してしまえば、たえず変化する環境に適応できなくなるのは当然である。したがって、変革を成し遂げたとしても、その状況に胡坐をかくような行動はとらず、絶えず問題意識を持ち続け、更なる高見を目指すという行動特性である。