例えば、カカクコムが運営する「価格・C O m」は、顧客が自分の足をつかって情報収集するしか方法がなかった小売店の価格情報を、居ながらにしてパソコンやスマホで簡単に比較できるサービスを提供している。さらに、そこから小売店のECサイトに移動して、商品を購入することもできる。消費者にとっては非常にありがたいサービスとなっている。
しかし、同社はどのようにして、どこからその運営コストや収益を得ているのかということが気になるところである。つまり、小売店にとっては、価格競争に巻き込まれる危険性もあり、あまりありがたい存在ではないと考えても不思議ではないようにも思えるからである。しかし、実際には小売店からの手数料や広告収入があるというから驚きである。
確かに、小売店側からすれば、他店と比較されることで、消費者が自店から購買されるチャンスが脅かされるという心配はある。ただ、心配だかといって、このサービスを自店のために中止してもらうことは出来ない。とすれば、何らかの形でこのサービスを活用し、収益力を高める工夫をする方が得だという結論になるのは当然の帰結であったと思われる。
そこで、仕入れコストを抑えるための努力や鮮度管理、セット販売などに工夫凝らし、他店に負けないようなお買い得感のある値決めをするという戦術も生まれる。そして、その戦術が功を奏したかどうかは、他店のサイトを閲覧することで判断できる。すなわち、「価格・C O m」は、公正な競争を監視する行司役としての役割があることを認めたわけである。
その上で、自店を市場の真っただ中に位置づけ、同じ土俵で公正に戦うことに活路を見出そうとしている。それが、価格・C O mから、小売店のECサイトに消費者が移動した場合に手数料を支払うことや広告を掲載するといった、コストを上回るメリットがあるということである。ここに一石を投じたことが双方から評価されたビジネスモデルである。