市場創造型

 市場創造型の特徴は、儲ける仕組みは基本的に既存のものと変わりないが、これまで必要とされていながら満たされていなかったニーズやウオンツに着目して、新製品を開発するプレイヤーである。さらに、消費者がこれまで気づいていなかった新しい機能を付加して、消費者に気づきを促すといった提案型の製品やサービスを開発するプレイヤーである。

 例えば、JINSのパソコン用メガネは、メガネのコアとなっている機能の「視力矯正」をパソコンのブルーライトをカットすることで「目を守る」という新しいコンセプトの製品を開発し、大ヒット商品となった。これは従来のメガネ市場とは異なった新しい市場を創造したものであり、飽和状態になっているメガネ市場全体を拡大視する効果があった。

 東進ハイスクールも、既存の予備校が採用している集合講義方式を衛星を使った講義方式にかえ、好きな時に質の高いオンデマンド型講義にすることで、現役生や地方在住の受験生の不便を解消することを狙った。既存の予備校がすぐに追従しようとしても、既存の教室を廃止したり抱えている講師陣を解雇することができないため、かなりの脅威である。

 青山フラワーマーケットが打ち出したコンセプトもこれまでのものとは一線を画している。これまで既存の生花店がターゲットとしていたのは、冠婚葬祭や贈答用といった法人の需要以外では、誕生日や結婚記念日、発表会などの私生活のイベントで使われることが殆どであったため、花は日常生活で使ってもらいたいという思いを込めたものであった。

 こうした提案を消費者に受け入れてもらうためには、まず、低価格で販売すること、日常生活で行き来する同線上に店舗を構えることが必要であると考え、これまでの生花店とは異なり、乗降客の多い駅なかや、人通りの多い場所に店舗を構えることにした。そのため、賃借料単価は高くなるが、その分坪数を押さえて、ストッカーなどの設備をなくした。

 その結果、その日に仕入れた商品はその日に売り切ることを実現できたので、つぼみの状態で仕入れていた時とは異なり、格安で仕入れることが可能となった。このように、「花は非日常的なもの」という習慣を「日常的に使うもの」というコンセプトで、商品づくりや店づくりをしたことが、消費者が気づいていなかったニーズを具体化することができた。