協調戦略の類型

 協調戦略とは、リーダー企業の戦略と歩調を合わせる戦略であるから、何らかの形でバリューチェーンの中に組み込むことになる。このことを前提に考えれば、協調戦略を選択する下位企業は、どのような軸でバリューチェーンを切り分け、自社の特徴あるいはボジョンを活用することで、全体の価値が高まるかを検討すればよいかという問題に行き着く。

 まず、自社の経営資源の質量により、「機能の代替」と「機能の追加」という軸が考えられる。もう一つは、「自社のバリューチェーン内に組み込む」のか、「他社のバリューチェーンに組み込む」のかという軸である。この軸を基準にすると、1)コアコンピタンス・プロバイダー、2)レイヤー・マスター、3)マーケット・メーカー、4)バンドラーという形になる。

 1)のコアコンピタンス・プロバイダーとは、競合企業と競争するバリューチェーンを持ちながらも、自社のコア・コンピタンスとなっている機能に関しては、競合企業の製品・事業・機能を取り込み積極的に受託する。ある特定の領域で、寡占に近い状況をつくる。GEの航空機エンジンや星野リゾート、レコフ(M&A)、キュービタスなどがその例である。

 2)のレイヤー・マスターとは、競合企業の一部の機能を代替し、その分野で寡占を作ろうとする戦略である。例えば、セブン銀行は、ATMに特化した銀行で、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行など592の金融機関と提携し、他行のキャッシュカードで現金を引出すことができるようにして手数料収入を得ている。棚卸代行のエイジスなどもその例である。

 3)のマーケット・メーカーとは、相手企業のバリューチェーンの中に新たな機能を付加することで、相手企業と協調しながら市場を形成していくプラットフォームを作る戦略である。印刷ポータルのラクスル、イオンライフの葬儀、ボランタリーチェーンコスモ・ベリーズなどがその例で、中小企業の市場形成に寄与するとともに、顧客価値を高めている。

 4)のパンドラーとは、新たな機能を追加する上で、競合企業の製品も自社の製品ラインに取り込み、顧客価値を高めると同時に、それによって同種の競合の参入障壁を高める戦略である。グリコのオフィスグリコ、アスクル、手術キットのホギメディカルなどがその例で、顧客価値を高めることで他メーカーのサービスにスイッチする必要性を防止している。