バリューチェーンの一翼担う協調戦略

 競合企業同士が協調し合う戦略といえば、最初に頭に浮かぶのがOEMである。しかし、この戦略は、どちらかというと現代では、企業規模の大小にかかわらず、お互いの得意分野を受け持つことによって、お互いの総コストが節約でき、結果として顧客の受け取る付加価値を高めることを狙ったものであり、ここでの主題である同質化回避とは無縁である。

その点からいうと、リーダー企業が同質化を仕掛けることにより、蓄積した経営資源を負債化してしまうより、下位企業にバリューチェーンの中で、一定の役割を担ってもらうことによる協調戦略の方が受け入れやすく、製品やサービスの総コストが相対的に低く抑えられるので、市場の安定にもつながる戦略として注目され、日々進化を遂げつつある。

バリューチェーンは、企業内での価値を作る活動とマージンを生み出す連鎖と位置づけられるが、その活動は、主活動と支援活動に分けられる。主活動は、購買物流、製造、出荷物流、販売・マーケティング、サービスなどのライン業務がこれに相当する。一方の支援活動は、全般管理、人事・労務管理、技術開発、調達活動などスタッフ業務に相当する。

一昔前は、バリューチェーンは、一つの企業内で完結するスタイルが一般的であったが、そのため、研究開発から生産、マーケティング(市場調査)、販売などを全て自社で行ってきた。しかし、2005年の規制緩和後は、CRO(開発受託)、CMO(生産受託)、CSO(販売受託)の機能に特化した企業が登場したが、現在は支援活動にまで拡大している。

 必要とするバリューチェーンの機能を自社が全て持っている場合は、自社のバリューチェーンの中に競合企業の一部を取り込み、競争しながら強調するというスタイルが可能となる(アスクルなど)。一方、必要なバリューチェーンの機能の一部しか持っていない場合は、競合企業の一部を代替する戦略や新たな機能を追加する戦略が採れる(IMSなど)。

 いずれの場合も、自社の経営資源の強みが活用できるポジションを狙うことが肝要であるが、それだけでは不十分で、リーダー企業が、具体的にメリットがあると受け止められるものでなければ意味がない。こうした場合は、他社との協調も検討すべきである。競合企業のバリューチェーン機能の一部を代替するのか、新しい機能を加えるかの選択である。