コーペティション

  コーペティション(co-opetition)とは競争(competition)と協調(cooperation)を合成した造語で、競争と協調が同時に行われるという考え方である。これまでマーケティングは、競争と協調は対極にあるという考え方を基本にして、競合関係を論じていたが、補完的生産者が存在することにより、お互いにメリットが生じることに着目したものである。

 例えば、ゲーム機メーカーは、優れたハードウエアを開発し販売したとしても、魅力的なソフトウエアがなければ、ゲーム機は売れない。こうした場合、お互いに自社の得意分野の生産を担うことにより、ゲーム機もソフトも売れることになる。つまり、補完的生産者が存在することにより自社製品の売上げも増やすことになるということを意味している。

補完的生産者とは、「自分以外のプレイヤーの製品を顧客が所有したときに、それを所有していないときよりも自分の顧客にとっての価値が増加する」と定義されている。しかし、こうした関係以外にも競合業者間で頻繁に協調が行われている。金融機関同士の協調融資や顧客の利便性のために、供給を代行する場合なども協調しているといえるといっていい。

更に、「自分以外のプレイヤーの製品を顧客が所有していたときに、それを所有していないときよりも、自分の製品が顧客にとっての価値が下落する場合、その自分以外のプレイヤーを競争相手」と定義しているが、商業集積などでは、ミクロ的に見れば、確かに顧客が他社製品を購入すれば、自社製品は売れないかもしれないが、顧客の購買機会は増える。

こうした考え方は、取り立てて言うほど新しいものではなく昔からあった。例えば、競争業者の事を、敵対したライバルと見る時は「商売がたき」と呼び、協調関係を強調するときは「同業者」と呼んでいた。しかし、現代では、こうした協調関係の重要性が見直され、マルチプラットフォームなどといったシステムが登場し、改めて認知を得たのである。

すなわち、従来の相互補完関係は、競合業者同士の経験則から生まれたものであるに対して、新たな定義は、顧客価値を起点として、協調をはじめからサプライチェーンの中に組み込んでいるわけであるから、リーダー企業が如何に経営資源の質量が豊富でも、それぞれの得意分野を生かせる生産者と位置づければ、リーダーにとってもメリットはある。