協調戦略とはどんな戦略か

  協調という言葉にはいろいろの響きがある。一般的には、「同じ目標に向かって協働するときに、小さい意見の違いを押さえて同じベクトルで行動する」という意味に使われるが、「あの人は協調性がない」などという使われ方をする場合は、単に自分の蛾を通す、唯我独尊的な人を意味している。この2つに共通しているのは、自分を押さえることである。

 このように漠然とした先入観があるせいか、協調戦略というと、リーダー企業に心ならずも追従することで共生の道を選択するような印象を受ける。しかし、ニッチ戦略や不協和戦略はリーダー企業とまともに戦っては勝てないので、リーダーの同質化を避ける戦略を選択しているのに対し、協調戦略はリーダー企業にとってもメリットのある戦略である。

 このような考え方は、ゲーム理論(合理的な豚ゲーム)でも証明されているように、協調戦略は、リーダー企業にとっても歓迎すべき戦略であり、決してリーダー企業に媚びることで生存領域を確保するような姑息な戦略ではない。このことは、ジョイント・ベンチャーやアライアンス、コンソーシアム、パートナーシップという表現からも窺い知れる。

 例えば、デファクト・スタンダード(事実上の標準)を勝ち取るためには、同じ規格を採用する企業が多いほど有利である。そのためには、特許を持つリーダー企業が他社へ無償公開したり、技術供与、OEM供給、クロスライセンスなどのオープンな政策を競合他社と繰り広げている。また、こうした動きは市場や業界の垣根を越えて生じてきている。

 また、自動車産業などでは、近未来型の自動車を見据えて、水素を燃料とする車の開発に力を注いでいるが、競合他社がそうした技術を共有できることによって、ガソリンスタンドに変わる燃料補給所が多数設置されるようになる可能性が高まる。こうした動きは、「敵に塩を贈る」という発想からではなく、協調戦略を積極的に望んでいるからである。

バリューチェーンやサプライチェーンなどに対する考え方も、一昔前とはかなり変わってきている。以前は、原料の調達や製造販売に至る一連のルートの中でも、力関係が取引を左右する重要な要因であったが、エンドユーザーにとって付加価値の高いものを供給することが企業の存続にかかわるため、協調性を抜きにしては語れない環境に変わっている。