市場規模をあまり大きく設定しすぎると、経営資源の質量に勝るリーダー企業に付け入るチャンスを提供してしまうことになる。リーダー企業の基本戦略は、前述のように同質化であるから、市場規模が大きいと判断すれば、高コスト体質でも挑める魅力的な市場と捉え、参入してくる虞があるからである。そうなれば、下位企業の基盤は失われてしまう。
次に、利益率を高めることも、同じような理由であるが、利益率が高いことが明らかになれば、例え市場規模は小さくても、高い固定費を十分回収できる見通しがたてられれば、やはり、同質化を仕掛ける動機となり得る。ニッチ戦略を志向する下位企業は、提供する製品やサービスを魅力的なものにしたとしても、利益率は低めに抑えなければならない。
もう一つは、投下した資本の回収期間を合理的に設定することである。というのは、投下した資本の回収速度を回収期間法で算定すると、その期間はかなり短くなるため、投下した資本が回収されたのだから、周辺需要を取り込むためのアクションを起こし、市場を急激に拡大する戦略に打って出る。これもまた、リーダー企業の同質化の餌食となり得る。
回収期間法は、簡便で解りやすいことから、中小企業などでは現在でも多く使われているが、やはり、投下した資本は、時間的な価値を考慮した、現在価値法あるいは内部利益率法を適用して、資本の回収速度と付加価値、金利を加味して算出すべきである。このようにして、投資効果を測定することで、市場の急速な立ち上げを防止することができる。
以上のように、ニッチ企業はリーダー企業を市場に参入させないためには、市場規模をあまり大きくしない、利益率抑える、市場を急速に確立しないという戦略が重要な鍵を握っている。このように見てくると、ニッチ戦略は、質的資源を武器に参入障壁を作るというよりは、リーダーの持つ大きな経営資源を活用させないことがより重要の要件である。