協調戦略

  リーダー企業と同じ土俵で戦わない戦略のうち、ニッチ戦略は、全体市場のなかのある限定的な市場に特化して、経営資源を集中するものである。下位企業がこの戦略を選択した場合、経営資源の質量にいて絶対優位にあるリーダー企業は、下位企業の戦略に対して同質化を仕掛けられない。固定化した高コストが回収できる見込みが立たないからである。

 また、どのような製品、サービス、ソリューションを売るのかという活動を事業領域として定めて活動しているリーダー企業は、これらを陳腐化させる下位企業の戦略に対して同質化を仕掛けることは、自社の事業領域も差別化戦略も否定することになるから、これまでの路線を変更することは大きな損失を招く。この戦略が、いわゆる不協和戦略である。

 すなわち、ニッチ戦略は、リーダー企業の経営資源の活用が不合理なものになる戦略で、不協和戦略は、リーダー企業の経営資源や戦略を負債化させる戦略ということができる。この2つの戦略は、リーダー企業と同じ土俵で戦うことを避けることで、独自の事業領域の確保を狙ったものであるが、競争を避けるという意味では、協調する戦略もあり得る。

 考えられる協調戦略は、経営資源の質量が脆弱な下位企業が、リーダー企業の同心円の中で、執拗な攻撃を受けないように、バリューチェーンの中で、補完的な役割を担い、リーター企業と協調路線をとることである。こうした戦略をとることにより、リーダー企業が直接投資を行うよりも、結果的に全体のインフラ整備が経済的なものになるからである。

 例えば、セブン銀行はATMに特化した銀行であるが、競合する銀行はセブン銀行と提携して、セブン銀行のATMで現金が引き出せるようにしたことにより、顧客の利便性に応えることができるようになったほか、自社のATMを縮小することができた。その他、鉄道の相乗りなどでも同様の効果があることから、こうした協調した戦略も検討に値する。

 協調戦略は、決してリーダー企業に媚びることを前提にした戦略ではない。そのことは、昔から、競合業者を「商売かたきという」といって敵視する一方で、「同業者」として敬意を表してきた。現実には、敵対するよりも強調することによるメリットの方がはるかに大きい。協調戦略はこうした視点からの発想で生まれる可能性が高い戦略であると言える。