棲み分け戦略

 棲み分け戦略とは、それぞれの企業が得意とする製品分野や地域に境界線を引き、お互いにその守備範囲を守り抜くことを目指した戦略である。これには、契約や提携によりルールをつくる場合もあるが、暗黙の了解により均衡を保っているという場合もある。JR東日本と西日本などは前者の例であり、マクドナルドとモスバーガーは後者の例である。

 ただし、リーダー企業との競争を避けるためにとる戦略は、お互いの合意を前提としたものではなく、リーダー企業に追従を諦めさせる戦略に限定して棲み分けを考えている。つまり、下位企業がとり得る有効な戦略がニッチ戦略とリーダー企業の経営資源や戦略が活用できない戦略が考えられる。つまり、リーダー企業が同じ土俵で戦わない戦略である。

ニッチ戦略とは、リーダー企業の持つ経営資源が威力を発揮できる市場とは異質な隙間分野を開拓する戦略である。その市場は規模も小さく、リーダー企業が参入すると、高い固定費が回収できないため、シェアを奪うメリットよりも、ニッチ企業の存立基盤を脅かすことによるデメリットが大きいと判断せざるを得ない、特殊な市場戦略のことである。

 例えば、ある巨大な市場でマーケティングを展開しているリーダー企業があるといった場合、その市場展開に満足していない消費者もある一定数存在するはずである。リーダー企業としては、そのことを見過ごしているわけではないが、その満たされていないニーズに対応するためには、新たな投資や組織体制を整える必要があり、うっかり手が出せない。

 一方、リーダー企業の経営資源や戦略が活用できない戦略とは、リーダー企業が保有する経営資源やこれまで培ってきた戦略との間に不適合が生じてしまうケースである。例えば、証券市場におけるリーダー企業は、株の売買を扱うことによる手数料収入を得るというビジネスモデルであったが、インターネットを活用して大幅なコストダウンを実現した。

 あるいは、大型店舗を全国に展開することで、顧客を囲い込むことを戦略としてきたリーダー企業に対して、ネット通販では、これらのリーダー企業が長年積み上げてきたインフラを負の遺産にしてしまう戦略をとっている。このように、リーダー企業が進めてきた戦略と逆行する戦略をとることで、無益な競争を避けることができるというわけである。