競争することのデメリット

 競争することのメリットは多いが、ものごとには、ある問題を解決するためにとった行動により、初期の目的は達せられたが、新たな問題が生じたということも多い。病気の治療のために投与した薬の副作用、為替リスクを軽減するために開発された取引形態などはその例である。このよう何かを得ようとすれば、その裏で失われるものが生じてしまう。

 企業間の競走も例外ではなく、デメリットは必ず生じてしまう。この場合のデメリットは、主に企業側に生じることが多いが、そのことが最終的に顧客の側に及んでくることは十分に考えられるので、顧客の側としても、いたずらに競走を煽ることは慎まなければならない。つまり、競争により企業が疲弊してしまうと、顧客対応が悪化することもある。

 企業の目的は顧客のニーズに応えることで、その報酬としての利益を得ることで組織の維持し、さらなる発展を目指している。したがって、安定した収益が確保されている状態においては、原則として顧客志向が貫かれている。ところが、いざ競争思考が強くなると、顧客価値を高める革新的志向が低下し、顧客リレーションシップの維持がおろそかになる。

 競争が激化するのは、製品ライフサイクルが成熟期に達する前後であることが多い。成長期には経験曲線が働き、製品コストが減少するので利益が増加するが、製品がコモディ化し、低価格競争が始まると、これまで蓄積された利益を吐き出さざるを得なくなる。本来であれば、蓄積された利益の一部は、適切な方法で顧客に還元されるべきものである。

 もちろん、低価格で商品を提供するというのも、顧客に対する還元の一つではあるが、熾烈な携帯電話の売り込み合戦や牛丼チェーンの価格競争、家電商品の割引などは、成長分野への再投資余力を低下させてしまい、競争に勝つこと自体が目的化されてしまう。こうなると、顧客も思わぬところから、そのツケが回ってくる羽目になってしまう虞がある。

 競争は、低価格競争に限ったことではなく、意識的に既存製品の陳腐化を狙い、主たる機能よりも、枝葉末節的なモデルチェンジを繰り返すと、最少の差別化戦略で競争を制したとしても、経営資源を無駄遣いした後遺症が、保有資源の運用力を低下させるばかりか、長時間労働など労働環境の悪影にもつながった。それが失われた20年の総決算である。