適正在庫の設定

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  在庫管理は、売上がいつ発生するかを予測することで適正な水準を維持しようとするものである。したがって、販売されることが100%保証されているのであれば、その時期に合わせて商品を仕入れておけば足りるが、通常は、販売数量も販売時期も確定していることは稀であるため、根拠のある販売予測とセットで在庫の調整・管理をしなければならない。

 また、在庫された商品は、本来、仕入原価にあたるものであるから、費用の区分では、その大部分は販売されれば、変動費として表示されることになる分けであるが、機会損失を防止する意味において、一定のストックが必要であることから、この部分に相当する在庫は、流動資産ではあるが、固定的な資産として位置づけられ、資金が固定化してしまう。

 つまり、在庫切れによって機会損失を招く虞もある反面、それを防止しようとすると資金を固定化してしまい、資金繰りに大きな影響を及ぼす危険性もある。このように、適正な在庫を保つことで、売上の最大化と資金の効率化を同時に実現しようとするのが在庫管理であり、それには在庫回転率、平均在庫高、在庫回転期間という指標を用いて管理する。

 在庫回転率とは、売上原価÷平均在庫高であり、平均在庫高は、(期首在庫+期末在庫)÷2、在庫回転期間(月数)は、在庫高÷(売上原価÷12)であるから、在庫回転率と在庫回転期間は、回転率でみるか回転期間で見るかの違いはあるものの、基本的には同じものであるが、資金繰り管理では、収支のタイミングを調整する意味で期間が重要である。

 過剰な在庫は、資金繰りを圧迫するのはもちろん、収益性を損なう虞もあるため慎重に管理しなければならないが、前述のように機会損失を招いてしまえば、やはり収益を圧迫してしまう。また、在庫の適正度は、売れ筋商品の欠品と死筋商品の過剰在庫を把握することで判断されるが、これには商品カテゴリー別の販売傾向や粗利益の分析が必要である。

 在庫管理が不十分であると、売上高の減少とデッドストックが同時に発生し、資金繰りも悪化してしまうため、売れ筋商品を仕入れることもできなくなってしまう。債務リスクに陥っている企業には、こうしたタイプが多く、在庫処分セールなども事実上できなくなっている。在庫管理は、総量管理とカテゴリー別管理を同時に行わなければ不十分である。