コスト削減と売上の増加

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 企業経営において、一番陥りやすい間違いは、利益が減少した原因は売上高が低下したことにあるといった短絡的な結論を出してしまうことである。もちろん、それが正解であることも十分考えられるが、利益を生み出す経営構造に問題がなかったかと疑ってみることも必要であり、大抵の場合は、売上の低下だけではなく、コストの問題も含んでいる。

 本稿では、売上の増加とコストの削減を同時に実現するための方策を探ることに焦点をあてて論述している。しかし、一般的な認識からすると、コストをかけなければ付加価値が上がるはずがないから、売上を伸ばすことも難しい。ただし、コストを削減しながら売り上げを高めている企業も存在しているところを見ると、不可能であるとは言い切れない。

 不可能だという考え方の背後には、現在のコスト構造が合理的に積み上げられているので、これ以上削減の余地がないというある種の確信があるからであろうが、顧客が求めている付加価値やその優先順位、潜在的なウオンツを起点とした考え方ではないように思われる。自社が提供した商品やサービスを付加価値として受け取るのはあくまで顧客である。

 すなわち、顧客が付加価値を感じた分だけ、総コストを受け入れるわけであるから、効率的経営によってコストを削減することで、相対的に付加価値を高めることに対する責任は提供者である企業側にある。例えば、DMにどれだけコストをかけたかではなく、コンバージョン率(CVR)やCPO(広告費用/注文数)によってコストが決まってくる。

 広告宣伝費の妥当性ばかりではなく、人件費や物流費、その他のコストについても、売上高との相関関係を調べてみる必要がある。ただし、コストは短期的な費用対効果だけでは判断しきれない部分もあるので注意しなければならない。つまり、どのような効果を期待して支出した費用(戦略的費用)であるかによって売上高との相関を判断すべきである。

 いずれにしても、費用対効果を測定するには、社内に蓄積されたデータだけでは不十分なことがある。こうした場合は、顧客の意見を聞くことが一番であるが、アンケート調査などに踏み切る前に、やはり、年齢や職業などと、購買金額、購買頻度などをクロスさせて顧客の属性ごとに整理しておき、その属性に応じたアプローチを考えなければならない。