おひとり様向け商品・サービス

 単身世帯は標準世帯「夫婦+子供世帯」を上回っている。もちろん、単独世帯には未婚者、離婚や死別により単身生活に戻った高齢者も含まれているが、ともあれ、今後は65歳以上の世帯の中で、圧倒的に単独世帯の比率が高まる。一人親子世帯も若干増加傾向にあるが、今後は、高齢者も若い世代も含め、「おひとり様」を対象にしたビジネスが伸びる。

 スーパーやコンビニエンスストアなどでも、おひとり様用商品パックの小分け化がはじまっている。また、レストランの席の小席化(カウター席や2人席の増加)もその表れである。食品関連でも、惣菜、宅配弁当、そのまま食べられる「レディ・ツー・イート」、加熱して食べられる「レディ・ツー・ヒート」などのミール・ソリューションが伸びている。

 旅行関連でも、「おひとり参加限定の旅」が注目されている。一般にパッケージツアーは夫婦や家族、友人同士で参加するケースが多いが、クラブツーリズムが提供する旅行スタイルは、一人で参加しても話し相手に恵まれず、躊躇することも多いことに着目した、おひとりさまだけで参加できる(ひとり参加限定の旅)ことを売りにしている商品である。

 単身者向けの商品やサービス市場は、無限に広がっていくものと思われる。特に、住生活や食生活などの日常生活を送る上で、一人暮らしニーズに応えるための商品・サービスは大幅に増えていくに違いない。調理器具もよりコンパクトで個食対応のものの開発が加速されるし、惣菜、弁当サービス、家事サービス代行、見守りサービスなども有望である。

 住環境関連では、見守りサービスや弁当の宅配などに参入する企業は多いものの、単身高齢者の社会的孤独感を解消するサービスとしては不十分である。単身高齢者が抱えている一番の悩みは、いざという時にどのようなサービスが確保されているかである。こうした不安を根本的に解消するには、コミュニティーとの連携をどのように構築するかである。

 若者向けに開発されたシェアハウスを高齢者向けに造り替えることも一つの選択肢である。既存のグループホームは、あくまでも認知症の人をゆるやかに見守りつつ、自律的生活を維持していこうとするもので、家族の意思により受動的に選んだものである。元気な高齢者は、自分の意思で将来設計をするなかで、他人との共同生活を視野に入れている。