時間消費型サービス

 定年後に急増するのは、「テレビの視聴」であるといわれる。確かに、定年によって仕事をする時間や通勤に費やす時間は一気になくなってしまうわけであるから、まだまだ働けるあるいは働きたいと思っている定年退職者にとっては、急に自由時間ができるという感じよりも、むしろ疎外感さえ感じてしまい、「とりあえずテレビでも」といことになる。

 しかし、定年前から計画していた「レジャー活動」や英会話などの「習い事」「家事」「社会参加」などに使うという人も多いようである。ただ、年齢を重ねていくと、通院や療養などに費やす時間も増加していくため、自由に使える時間は徐々に減少していくことにもなる。それだけに自分らしく充実した人生を歩みたいという願望も増してくるはずである。

 女性は男性ほど大きな変化はないが、「マスメディア接触」や「レジャー活動」「療養・静養」などの時間が増えてくる。テレビの視聴時間が増えるのは、一つの現象であることには違いないが、ここに時間消費型商品やサービスの願望が込められているとは考えにくい。ここには、お金をかけたくないという経済的制約条件が隠されているからに違いない。

 高齢化率が少なかった時代は、高齢者の時間消費型サービスに対する需要はあったものの、事業やサービスを提供する側から見れば、マーケットのパイが小さかったので、多様なメニューを開発する動機も希薄であったが、土日や祝日に関係なく時間にゆとりのある高齢者の増加は、平準化したサービスを提供できる大きなチャンスと捉えることもできる。

 こうした背景から、リタイア後の自由時間の増加により、エンターティメントや趣味関連の市場拡大が期待されている。ただ、こうした市場も、単に大くくりにするのではなく、アウトドア系、インドア系などに分けるとともに、更にこれを細分化して個々の趣味ごとにアプローチしていくことを考えるべきである。その際考慮すべきことは価格面である。

 例えば、ウォーキングやフィットネススタジオといった日常的な健康志向をテーマとしたスポーツや趣味、日帰り旅行、家庭菜園、花壇など、比較的安価で時間を消費できるものが受ける一方、ここ一番の時に気合を入れて楽しむプレミアム・エンターティメントにも関心が高い。いずれにしても、高齢者にとって「時間消費」は大きな課題になってくる。