在宅介護商品・サービスの開発

  高齢者数の増加に伴い、確かに要介護者数は確実に増加していることから、介護関連商品やサービス産業の市場規模も伸びている。しかし、高齢者中に占める要介護者割合は、2割以下に過ぎず、8割以上の高齢者は、健康で自立した生活が可能である。しかし、介護認定を受けたり、病院で処方を受けるほどではない人も、何らかの不便を感じている。

 公的介護保険制度が十数年前に導入されて以来、介護保険制度を利用した有料老人ホームやディケア施設、リハビリ施設などへの民間企業の参入も進みつつある。平成23年から「サービス付高齢者向け住宅」の登録制度が創設されなど、急速に戸数の確保が図られつつある。また、民間企業による介護事業や介護商品・サービスの伸びも期待されている。

 しかし、社会保障費の大きな伸びが懸念されており、今後は「施設」介護から「在宅」介護へのシフトが進むものと予想される。さらに、在宅医療、在宅看護との円滑な連携体制の構築も今後の大きな課題である。ロボットやITを活用した介護システムの開発が求められているが、マンパワーがメインの部分をどれだけ代替できるかは未だ不透明である。

 福祉関連の予算を確保するためにも、高齢者に生き甲斐を感じてもらうためにも、加齢に伴う軽微な不便や悩みを克服しつつ、ある程度の労働力の提供を可能にすることは、社会構造上からみて不可欠である。それには、高年齢者雇用安定法の改正では、到底不十分で、元気な高齢者が、公的年金にプラスαの所得が得られるようなシステムも必要である。

 こうした仕組みが構築されれば、若年層の負担も軽減されるし、高齢者自身も、可処分所得が増えることで、積極的に介護関連の商品やサービスの提供が受けられる。ビジネスとしても、必要性があっても、購買力が限定的であっては魅力のある市場とは捉えにくいかも知れないが、全体の市場規模は膨大なものであるため、積極的に取り組むべきである。

 介護対応型サービスから、介護予防の視点で捉えれば、重度の要介護者も徐々に減少し、寿命が延びた分だけ、労働力人口も増加することになるため、国や地方地自体の予算もコンパクトに収まることになる。労働力人口が減少に転じて久しいのに、非製造業の生産性が諸外国に比べて低い。高福祉と高負担をセットで考えるべきではないように思われる。