多角的なアプローチ

 

 高齢者に関心を持たせ、「自分のこと」として位置づけてもらうためには、「体験」「ソフトタッチの誘引」「納得のいく規定」「価格」などが考えられる。これらの要素は、一つだけを強調するのではなく、どんな商品やサービスを提案する場合でも、これらの要素を適宜組み合わせて、高齢者の凍りついている懐疑心を解きほぐすアプローチが必要である。

 一般論や他人事として、商品やサービスを位置づけている限り、特別の興味を示すことはないことから、「どのような方法で身近なものに感じてもらうか」を考えた時、やはり、直接体験してもらうことが有効である。例えば、体脂肪、骨密度の測定などにより、実年齢と標準年齢の比較をして、本人の状態に適した商品やサービスを推薦するなどである。

 このように、商品やサービスを販売することを目的としているというよりも、まず、「あなたの健康状態をチェックすること」をメインにアプローチすることで、高齢者自身が納得できるものであれば、ヨガ教室やウォーキングなどのサークルにも興味を示すことになる。そうなると、自然とトレーニングウエアやシューズ、サプリメントにも興味を示す。

 次に大事なのは、納得いく規定である。これは、「あなたのために」といコンセプトを明確に表現いるものであることが重要であるわけであるから、JR東日本の「大人の休日倶楽部」JR東海の「50+」やイオンの高齢者向け特典付き電子マネー「GGワオン」、イトーヨーカドーの「シニアナナコ」その他の「シニア割引」など、明確な特典が有効である。

 高齢者の誘引で忘れてならないのは、やはり価格面でのアプローチである。なにしろ、可処分所得の主なものは年金以外ないと考えれば、商品やサービスの購入に関する価格のインセンティブ志向は強いものと思われる。つまり、「良いものであれば、少々高くても買うはず」という考え方は通用しない。この傾向は、消費増税とも大きく関連を持っている。

 商品やサービスを提供する企業側としては、これらの要素を適宜バランスよく組み合わせ、高齢者に、「自分のこと」であることを強く印象付けることが重要であるが、上述のように「予算」面での制約もあり、「使用・消費価値」と「交換価値」の均衡を保ち続けることは困難になってきている。つまり、顧客機能をどのようにして上げるかが課題である。