商品コンセプトを「あなたのために」と設定し、具体的な商品やサービスを開発したとしても、それをどのようにして高齢者に伝えるかが問題である。通常はテレビのCMなどを通じて、メッセージを送ったり、無料サンプルを提供したりすることが多いようであるが、伝統的なこうした方法では、なかなか高齢者の心に響きにくいというのが現実である。
新商品やサービスに対して、一般的に高齢者は若者より懐疑的で、もし興味を示した場合でも、デメリットを徹底して追求する傾向がある。人生経験が豊富なだけに、詐欺行為などに対する警戒心も強いが、情報取集力も限定的なので中々価値判断が難しく、特別な機会がないと、新製品やサービスに対して積極的になれない。この壁の突破が問題である。
しかし、高齢者は健康に対する不安、経済的な不安、孤独に対する不安など、共通に抱えている不安があるわけであるから、これらの不安の解消に役立つ商品やサービスに興味がないわけではない。それにもかかわらず、積極的になれないのは、今まで築き上げてきたものを失うことに対する恐怖心が大きなブレーキになっていることが原因と考えられる。
こうした心理状態は、ゲーム理論的に言うと、ゲームに参加したい気持ちはあるが、まけるのは怖い。つまり、大勝をすることは望まないが、現在のポジションを失いたくないというという構図であるから、選択できる戦略は「ミニマックス戦略」である。したがって、高齢者をゲームに挑ませるには、「リスクゼロ」を高齢者に知らせなければならない。
その具体的要件としては、まず、費用対効果が高齢者自身の価値観により、容易に測定でき、納得できるものであること。さらには、なるべく効果と費用が同時に発生する仕組みをつくり、リスクや不安が心の中に残らないようにする。もしどうしても効果を実感するまでには長期間を要するものである場合は、それをはっきりとデメリット表示をする。
次に、ルールを解りやすく規定し、高齢者が納得できるものにすることである。例えば、契約締結やその解約の場合の手続き、自分が負担する責任範囲、自分向けの商品・サービスであることの理由の明示、安心・安全であることの理由を開示する等々である。しかし、実際にはリスクをゼロにすることはできないので、ある程度はブランド力も必要となる。