シニア層は、概していうと貯蓄額も多く、確かに若年層よりもゆとりがあるように見える。そのためか、従来のマーケティングはシニア市場を人数の多いマス・マーケット市場として捉えてきた。つまり、年齢層別の貯蓄額を頼りにしてマーケティングを展開してきたわけである。しかし、今やシニア層は、一つの塊として捉えるだけでは不十分である。
貯蓄率は高くても、退職して現役を離れると、途端に消費のサイズは小さくなるといった現象は、正にこのことを象徴している。だからと言って、全ての消費行動を控えるわけでもないというところに、そのヒントが隠されているようである。その変化の要因を探ることが今後のシニアマーケティングを考える場合の大きなヒントになるものと考えられる。
全ての要因を明らかにする分析は道半ばであるが、少なくとも、高齢者本人の消費行動は、加齢により変化するというよりは、ライフステージなどの変化によるところが大きいと推察される。それは、加齢による肉体の変化、ライフステージの変化、家族のライフステージの変化、世代特有の嗜好性とその変化、時代性(流行・生活環境)の変化である。
若干の説明を加えると、人間は誰でも同じように老いていくものではあるが、必ずしも歳を重ねるごとに、消費行動が一律に変化するものではない。昨日まで元気でジョギングをしていた人が、転倒して車いすの生活を強いられるようになれば、同じ年代だからと言って、同じような消費行動をとり続けることは不可能になり、転機が訪れることになる。
また、ライフステージの変化では、住宅の住み替えや郊外などへの移転という変化もあるであろうし、自分自身ばかりではなく、両親や子供との同居なども大きな変化となり得る。そして、世代特有の嗜好(学生時代からの嗜好品)などは基本的には変わらないにしても、病気などにより断念せざるを得ないという変化も生じるなど、年齢とは連動しない。
さらに、その時代背景の変化は、消費行動を規定してしまうことがある。その最たるものが、携帯電話やスマホに代表されるIT機器の進歩である。情報化の外部性は好むと好まざるとにかかわらず、全ての人々を巻き込んでしまうので、自分自身の拘りを貫き通すことは難しい。このように、シニア層といえども、表向きの現象で見極めるのは難しい。