高齢社会のマーケティング

 シニアの消費総額が100兆円を超えたというのは、高齢人口が増加した結果であり、総人口が減少しているため、国民一人当たりの消費額が増えない限り、総消費額も先細りになることは確実である。近年はやや回復傾向にあるとはいえ、1997年以来日本の総小売額は減少傾向にある。これはバブル崩壊だけではなく、生産年齢人口の減少にもよるものだ。

 つまり、働いて収入を得る人口が減少したので小売総額が減少したという構図になっている。消費不況が改善されないまま、高齢化が進展したため、相対的に高齢者の消費が増加したしたもので、いわゆるシニア・シフトが加速したためである。当然シニア層が大きなターゲットとなってきたことは間違いないが、高齢者を攻略するのはそう簡単ではない。

 何故ならば、これまでのマーケティングは、若年世代や女性、主婦をターゲットにして展開してきたため、高齢者を対象としたマーケティングはあまり研究されておらず、せいぜい、「団塊の世代は消費意欲が高い元気な人が多い」といったステレオタイプのイメージでとらえていたものが中心であった。もちろんこれも一つの特徴であることは確かである。

 65歳に達した団塊世代は、戦前生まれ世代とは異なった価値観とライフスタイルを持っているし、肉体的にも以前の高齢者とは異なり、概していえば健康な人が多い。しかし、それだけで従来の高齢者と比べて、彼らの消費意欲や消費行動が劇的に向上するという証拠にはならない。高齢期には高齢期特有の行動変化が生ずるし、世代によっても異なる。

 当然のことながら、団塊の世代も長年にわたり生活体験を積み上げることで、日常の行動習慣も自分好みに集約され、新しいことに対する備えや意識も高まる一方、自ずと無駄な消費は控えるという意識が働く。これからの高齢者マーケティングは、高齢者特有の生活や心理の変化を十分に理解した上で、シニアの特性を捕まえなければならないであろう。

 100兆円規模という数字だけが独り歩きしているようであるが、シニアの財布の紐は固く、必要なものや、こだわりを持ったものには興味を示すものの、全体の消費を押し上げる力になるかどうかは今のところ定かではない。伸び率が高いのは、高齢人口が増加したためであり、決して1人当たりの消費額が伸びているわけではないことを見逃してはいけない。