平成24年の総務省統計局による「家計調査」によると、1世帯当たりの保有正味金融資産は、70歳代が一番多く、以下60歳代、50歳代、40歳代、30歳代(マイナス)となっている。一方、同年の厚生労働省「国民生活基礎調査」では、世帯主の年間所得が最も多いのは50歳代で、以下、40歳代、30歳代、60歳代、70歳代、20歳代と続いている。
すなわち、シニア世帯は貯蓄率が高いが、年間所得は低いということになる。こうした構造は、勤続年数や就労年数が多いため、退職金やそれまでの貯蓄が多いことに加え、すでに親からの相続により資産が増加しているなどに起因するものと思われるが、退職や引退により、年間の主な所得が年金や資産運用によるものに限定されていると見られる。
100億円市場などと言われ、着目されているシニア層ではあるが、その構造は極めて複雑なものがある。第一に、シニアは3Kと言われる不安(健康不安、経済不安、孤独不安)を抱えているため、いざというとき高額の出費が必要なると考え、日々の出費を極力抑えようとしている姿が窺われる。つまり、所得範囲内で支出を賄おうとしているわけである。
確かに、デパートなどで高額商品を購入するのはやっぱり金持ちのシニアが多いし、海外旅行に出かけるのもシニア層が増えてきている。しかし、前述の所得と消費がほぼ連動しているという事実もまた見逃せない。このように見てみると、シニア層は、倹約と一点豪華主義を使い分けているだけであり、財布の中身より消費意欲は薄いとみるべきである。
その理由は、人それぞれであるから、一概に決めつけることは出来ないが、前述の3K不安は、実はもっと深刻である。健康不安は当然のこととしても、もしも、健康で長生きした時にどれだけの支出を見込めばよいのか見当がつきにくい。しかし、それだけに楽しく余生を過ごしたい願望もあり、そのために必要な支出はやむを得ないとも考えている。
これらの事実を直視すれば、無暗に消費を煽るマーケティングではなく、シニア層の不安を軽減し、限られた所得を有効活用する施策を検討すべきだということになる。例えば、JR東日本のジパング、映画館のシニア割引、イオンが導入したG・G(グランド・ジェネレーション)割引などはその試みと言えるであろうが、まだ途に就いたばかりである。