ブレーンストーミングの活用ステージ

 

 アイディアを創造するためのツールは数々あるが、その大本となっているのはブレーンストーミングであることは疑う余地がない。しかし、むやみにブレーンストーミングを行っても成果が得られないことも経験している。クリエイティブなアイディアを生み出すということは、単に斬新であるだけではなく、同時に有益でなければならないからである。

 創造性と共同作業の分野で知られているR・キース・ソーヤーによれば、クリエイティブなものを生み出したい人やチームは、次の8つの段階を経ることで、求める結果が得られると結論づけた。これは、チクセントミハイがクリエイティブなプロセスを5つの段階に分けて紹介したものを土台にして、幅広く取り組み、検討した上で構築したものである。

 8つの段階とは、1)問題を発見し、明確にする。2)関連する知識を集める。3)関連する可能性のある情報を集める。4)培養の時間を設ける。5)幅広くアイディアを出す。6)アイディアを予想外の方法で組合せる。7)一番良いアイディアを選ぶ。8)アイディアを具体化する。ブレーンストーミングは、第5段階「幅広くアイディアを出す」に組み込むとしている。

 この場合、ブレーンストーミングは、拡散的思考のテクニックの一つであり、一番良いアイディアへ到達するには、収束的思考とペアでつかわなくてはならない。収束思考とは、複数のアイディアを組み合わせ、評価するとき(第6と7の段階)に生じる。収束的・拡散的思考と同じぐらい大切なのが情報収集(第2と第3の段階)であると指摘している。

 この指摘は、正しい知識がなければ、正しいアイディアを生み出すのも、どのアイディアに一番可能性があるのかを判断するのも難しいからである。ソーヤーが提示した、より大きな創造的プロセスの一段階として使う限り、ブレーンストーミングは、新しい有益なアイディアを生み出す、優れたツールであるが、実際にはそうした使われ方はしていない。

 ブレーンストーミングは、人数を集めて潜在的なアイディアを出しあう作業であると思い込んでいる。そして、2ないし3個のアイディアについて意見が交わされたところで、一番声の大きい、あるいは一番えらい人間が自分のもとのアイディアを取り上げて、これでいいなと強引に同意を得る。これは、ソーヤーのプロセスとは正反対で全く機能しない。