創造的ひらめき

 

 心理学者のミハイ・チクセントミハイが、91人のクリエイターを被験者として、「ひらめきを得る方法は何か」について、彼らがどんな思考プロセスを用いているのかを調べた。研究の目的は、彼らが自分はどのように創造的ひらめきを得ていると考えるかを理解することにあった。つまり、彼らがひらめきの瞬間を一体どうやって生み出しているのか解明しようとした。

その結果、殆どの人が、準備、培養、ひらめき、評価、精錬の5つの段階からなる共通の創造的プロセスを踏んでいることが判明した。ここで特筆すべきことは、このプロセスの中に、ひらめきの瞬間が含まれていることである。ひらめきの瞬間とは、パズルのピースがうまく収まったように感じる瞬間のことで、通常は偶然の出来事と理解されている。

しかし、チクセントミハイによれば、より大きく複雑なプロセスの中心にこの瞬間を位置づけている。そして、プロセスの一段階として、特に仕事の場において見落としがちな、培養の段階も含まれていると指摘している。ここで、培養とは、しばらく仕事から離れる段階のことで、多くの創造的な人々の意図的なプロジェクトから一歩離れた状態だという。

準備段階で培った知識がこの培養段階で消化され、意識をしていないところでアイディアがまとまり始めると考えているからだという。また、一つのプロジェクトに意識を集中させている間に、別のプロジェクトが無意識に培養されると考え、わざと複数のプロジェクトを同時進行で行う人もいる。ニュートンやアルキメデスも突然閃いたわけではない。

世界的なクリエイターたちと我々のような凡人を同レベルで考えるのはいかがなものかとも思えるが、たしかに、一つのことにだけ集中しているときよりも、無意識に複数のことを並行して抱えているときの方が、アイディアを培養できるという実感はある。それは、睡眠中でも何らかの情報処理が進行し、アイディアが浮かぶことでも説明できそうである。

 培養段階は数日から数年かかることもあるが、自然に進めば、いずれひらめきの段階に到達する。「ひらめき」を得るのはこの段階だ。培養されたアイディアが発酵し、具体的な試験、実行できる潜在的解決策へとつながるのであって、ひらめきはどこからともなくやってくるものではないと主張している。(デビッド・バーカス著、プレシ南日子、高崎拓哉 訳「どうしてあの人はクリエイティブなのか?」より)。