アイディアの絞り込みと熟成

 

 できるだけ多くのアイディアを出し、この中から問題の解決役に立つものを絞り込むことになるが、そう簡単に見つからないのが普通である。そこで、しばらくの間は試行錯誤を繰り返すことになるが、やはり、画期的なアイディアを特定するには至らない。こうした場合、テーマから離れることが大事なのだが、簡単には切り替えられないこともある。

 私などは、せっかちな性格のせいか、テーマから離れたつもりが、頻繁に戻ってしまうので、中々熟成できないという状況が続いてしまう。そのためか、結局最後には疲れ果てるとともに、他の仕事の遅れも気になりだし、無意識のうちに、課題の解決をさきのばしにしてしまうこがある。しかし、不思議なことに、ある時とつぜん蘇ってくることがある。

 ただし、最初の踏み込みや情報収集が不十分であるため、脳からやり直しを命ぜられてしまう。こうしたことを何度か繰り返しているうちに、少しずつ情報も蓄積されてくるのか、使えるアイディアの候補が次第に狭まってくる。一流のアイディアマンから見れば、何とも幼稚なやり方だということになるかもしれないが、今もなお抜け出せないである。

 いずれにして、徹底してアイディアを量産し、後はしばらく放っておくというのは共通しているように思われる。ある人は「別の仕事に取り掛かれ」というし、「問題を心の中で寝かせておけ」という表現をする人もいる。私としては、鶏が自分の卵を抱えて温めているように、問題意識だけは、心の片隅に置いておく方が性に合っているように思っている。

 少し理屈を付けるとすれば、「孵化する」というのは、ただ放っておくということではなく、それなりの意識を持って熟成させることだと思うからである。孵化させるためには、言一定の温度や環境管理が必要であり、アイディアでいえば、無意識のうちに情報の組み合わせ作業が密かに進められているに違いない。ただの放りぱっなしでは育つはずがない。

 少し横道にそれてしまったが、アイディアを発想するということは、特殊の才能の持ち主の専売特許ではなく、誰にでも挑戦できるものであるということを言いたいのである。自分にはアイディアを発想することなどできるはずがないと思うのは、潜在意識で自分の能力を抑え込んでいるに過ぎない。手始めにまず、アイディアを量産してみることである。