問題を正しく捉える

 

 何事にも情報の収集は必要であるが、私たちが通常情報を収集するときは、何らかの問題を解決するために、どのようなアクションが必要かを考え、そのアクションが最も効率の良いものにするために情報を求める。アイディアの発想も同じことで、何が問題なのかを正しく把握した上でなければ、アイディアとして評価することは出来ないはずである。

 アイディアの発想というと、問題が正確に把握されていて、それに基づいた課題やテーマが設定されているという前提で進められるが、実際には、解決策としてのアイディア発想以前に、そもそもの問題が何であるかを表面的にしかとらえていないことが多い。例えば、売り上げが落ちているので、「営業力強化」が課題であると定義してしまうなどである。

 すなわち、「売上が落ちた」という現象は一目瞭然であるとしても、その原因が即営業員の力不足と決めつけてよいものだろうか。もしかすると、市場が飽和状態だったり、製品のライフサイクルが衰退期を迎えているということはないのだろうか。このように、アイディアの発想のための情報収集とは、問題を正しく捉えるものも含めなければならない。

 売り上げが落ちたということは、販売する立場からだけ見るのではなく、購買力が落ちたという顧客の視点からの分析も必要である。その捉え方によって、「売るためのアイディアか」、「顧客が買いたくなるようなアイディアか」、あるいは、「競争相手との差別化を強調するためのアイディア」なのか、といったことを明らかにするための情報収集である。

 例えば、スーパーマーケットの「セルフサービス方式」というアイディアが開発された経緯を見ると、それ以前商業施設の課題は、「どのようして、顧客の求める商品を探すか」に焦点があてられていたため、人海戦術が不可欠であると考えられていたが、実は、顧客が真に求めているのは、自分の選択眼で商品を直接選定したいと願っていることであった。

 顧客の立場に立って情報収集をし、本当に顧客が望んでいるものは何かを追求した結果、「自己解決を如何にして実現するか」という課題に行き着いたわけである。もしも、顧客がこの方式を商業施設側の「人件費の節約」としか受け取らなかったら、セルフサービスは、これほどまでに定着しなかったはずである。問題の本質を見事に捉えた好例である。