アイディアはどのようなプロセスを経て生まれるのか

 

 アイディアというと、どうしても画期的な発明を思い浮かべてしまうが、実は、誰でも日常的にアイディアを思いついている。ただし、それがアイディアと呼ばれるほどの価値があると自分では判断していないだけで、小さな意思決定をするにも想像力は生かされる。例えば、「誕生日のプレゼントを何にすれば喜ばれるか」と考えるのもアイディアである。

 こうしたアイディアを何時も出してくれる人は、アイディアマンなどと言われて、羨ましがられたり、重宝がられたりしているが、アイディアを生み出すにはある手順があり、大なり小なり、この手順を踏んで、アイディアを創造しているように思われる。そのプロセスについて多くの著名人が説明しているが、その論旨には共通する部分が多く見られる。

ジェームス・W・ヤング(ACの創立者)は、第一段階:資料集め(特殊な知識、一般的な知識)。第二段階:資料を咀嚼するプロセス。第三段階:問題をすべて忘れ、問題をできるだけ完全に心の外に追い出す。第四段階:どこからともなく、アイディアが浮かんでくる。第五段階:生まれたてのアイディアを現実の世の中に連れ出し、上手く行くかどうか試す。この五つであるとしている。

一方、ドイツの哲学者ヘルマン・ヘルムホルツは、第一ステップ:準備{問題をあらゆる角度から考えてみる(ヤングの第二段階に当る)}。第二ステップ:孵化{問題について意識的に考えない(ヤングの第三段階)}。第三ステップ:解明{予期せぬときに、素晴らしい考えがひょっこりと、まるでインスピレーションのように浮かぶ(ヤングの第四段階)}。

カリフォルニア大学の研究者モーシュ・F・ルビンシュタインは、ステージ1:準備{問題を構成している要素を洗いなおし、それぞれの関係を研究する(ヤングの第一及び第四段階)}。ステージ2:孵化{すぐに解けない問題は、ねかせておく(ヤングの第三段階)}。ステージ3:インスピレーション{突然、道が開ける(ヤングの第四段階)}。ステージ4:検証{思いついた解決法が実際使えるかどうか試してみる(ヤングの第五段階)}。

そして、チャールズ・S・ウェイクフィールドは、「創造的行為」について、第一ステージ:問題の存在に気づく。第二ステージ:問題の意味を明確にする。第三ステージ:問題を徹底的に検討し、問題に関するデータをできるかぎり集める(ヤングの第一及び第二段階)。第四ステージ:孵化の時期であり、表面的には静か(ヤングの第三段階)。第五ステージ:爆発が起こる。心がアイディアをわしづかみにする(ヤングの第四段階)。

これら4つの説は、どの時点をどの段階に据えるかという点では異なっているが、問題把握→情報収集→孵化→アイディアの想起→検証というプロセスの中に納まる。つまり、一度問題を整理し、これを解決するために情報を収集したら、あとはしばらくねかせて熟成させる。それがあるとき突然アイディアとなって目の前に出現するということになる。

(ジャックス・フォスター著:アイディアのヒントより)