組み合わせによるイノベーション

 

 シュンペーターによると、イノベーションとは人と組織の新結合であるという。ということは、一つひとつのアイディアや技術が新しいものでなくても、その組み合わせ方によって新しいと評されれば、それ自体イノベーションなのである。新製品を開発する場合でも、小さな改善を積み重ねることで、従来とは全く異なる新製品と認められることもある。

 近年新しく登場した、マルチプラットフォームなどとしい概念も、現在に至るまでの歴史から学んだものである。例えば、城下町や門前町、宿場町などは、自然発生的にできたものではなく、人々が集まる仕組みを作ることによる経済効果を期待したものであり、思惑通りに新しい需要が生まれ、その波及効果が更なるインフラ整備に繋がったものである。

 マルチプラットフォームは、この歴史的営みが原点であることは疑う余地がない。多少飛躍した考え方であるという批判を恐れずに言うならば、イノベーションとは多少の革新と既存のモノの組み合わせによって成し遂げられる可能性が高いともいえる。もちろん、それが加速化されたのは、ITという技術によるところが大きいことは言うまでもない。

 IT技術を誰もが使いこなせるようになった現在、組み合わせを工夫すれば、中小企業にも新しいビジネスモデルを開発する素地が整ったということになる。総体的な面では大企業が有利であるという現実には変わりはないが、少なくとも、これまで独占的であった牙城に風穴を開けられるチャンスが大きくなってきていることは実感できるところである。

 しかし、新製品の開発を唯一の差別化戦略と思い込んでいる体質を改めなければ、せっかくの成長の芽は育たない。伝統的ビジネスモデルやここで触れた戦略パターンを組み合わせ、場合によってはアレンジをすることで、顧客の選定と付加価値の提供方法を見つける。その具体的な取り組みが、PDCAを高速で回転する仮説・検証スタイルなのである。

 業種や企業によって回転スパンは異なるであろうが、要は、仮説をもとに構築された戦略を実施し、その功罪を素早く検証することで、市場戦略のブレを素早く修正する。これが身軽な経営に与えられた最大の特権であることを忘れてはならない。まず手始めに、見事なまでにコーディネートされた、業界の常識を疑ってみるというのはどんなものだろう。