PDCAサイクルの高速回転

 

 ものごとはすべからく、計画・実施・評価・改善というサイクルを回しながら、目標達成に向かって進められていく。それにもかかわらず、こうした当たり前のサイクルを回す仕組みを組織の中に根づかせるのが難しいのはなぜだろうか。そこには、このシステム自体に対する誤解と目標管理の理解不足によるところが大きいためではないかと思われる。 

 まず、PDCAサイクルに対する誤解についてであるが、この形を実践するためには、それなりの仕組みを作り、定式化する社内体制が必要であり、中小規模の企業には難しいのではないかという誤解である。要するに形式要件に拘りすぎて、現実的運用を敬遠してしまい、自社には馴染まないという偏見が定着してしまったものであるといえなくもない。

 しかし、本当の理由は、そんなもっともらしい理屈ではなく、その中身にあるというのが本音のようである。すなわち、計画を立て実施するまではいいが、それを評価する段階で、「どうして達成しなかったのだ」という詰問にあうという構図が頭をよぎり、何とかこれを回避したいという思いが、間違った思いやりになり、中途半端なものになっている。

 しかし、前述のように、組織として達成しなければならない目標がある以上、その達成に向かって何らかのアクションを起こすのは当然の事であり、それが達成できなければ、その反省を踏まえ、新たな戦略を実行することになるわけであるから、仮説と検証を繰り返すPDCAサイクルは、好むと好まざるにかかわらず常に回っているはずなのである。

 こうした誤解を招いているのは、もしかすると、PDCAサイクルを回すスピードにあるのかもしれない。例えば、SAPS経営で知られるユニ・チャームでは、「週次単位の管理」「社長も含めた全社員を対象」「できなかった原因の掘り下げ」を柱にして、できなかったことの責任を追及するというものではなく、どうすればできるかを問題にしている。

 また、トリンプの早朝会議は、「形式美の排除」「自主性の尊重」「行動の即効性」を大原則にし、一日のサイクルでPDCAを回している。もう一つの「目標による管理」に対する認識もこのシステムの中に組み込まれている。すなわち、上司が管理するのではなく、自分の立てた目標を自分で管理するというドラッカー基本原則が貫かれているわけである。