多様な人材開発と活用

 

 プロダクト・ポートフォリオ(PPM)戦略は、市場に投入されている製品のポジションを、市場成長率と相対的シェアの大小により、負け犬、問題児、花形、金のなる木という4象限に区分し、そのポジションを踏まえてマーケティング戦略を考えるというものであるが、この考え方を人材活用や能力開発に応用して、人事制度を見直して見てはどうか。

 大企業の場合は、事業部制やビジネスモデルの開発という形で考えることが通常であるが、単一の事業を前提としている中小企業の場合は、多様化戦略で活路を見つけるのが、リスク管理という観点から見ても現実的である。そうした場合、どうしても人材の活用がカギとなるが、この最大の経営資源である人材力が十分に活用されていない企業も多い。

 付加価値生産性(従業員1人当たり付加価値)を見ると、業種・業態や規模の大小などによる相違よりも、個別の企業による相違が大きいように思われる。こうした非効率と思われる企業の特徴は、平均的に低いというよりも最大と最小の差が大きいことである。そして、この差が生じている原因を、個人の能力の差と考えている経営者が多いことである。

 その一方で、個人の能力を十分に発揮できる人事システムになっていないのでないかという反省もあるようである。そうした企業では、当然のごとく提案制度などはなく、あっても有名無実化しており、今後も導入する意思がないようである。その理由は、「過去にやってみたがほとんど効果がなかったから」という理由を挙げるというのも共通している。

 そこで、3Mの15%ルールやグーグルの20%ルールを例に挙げ、提案制度の有用性を説明すると、今度は財政的な余裕がないという答えが返ってくる。しかし、これは明らかな矛盾である。付加価値生産性が低いということは、意識的かどうかは別として、従業員稼働状況が低いということは、財政的にも大きな無駄が生じているということだからである。

 すなわち、この無駄を解消するためには、社員に一つでも多く提案をさせ、その中から優れたものを見つけ出せれば、非稼働になっている人材も活用できるし、無駄になっていた財務支出(人件費)も経営品質の改善に生かせることになる。中小企業こそ、社員に新しいテーマを考えさせ、新規事業に結びつける仕組みを導入することが強く求められる。