ブランド戦略

 

 ブランドとは、本来自社と他社を判別するためのものであるが、現在では、顧客に対して一定の価値水準を提供することを保証する役割を持っており、顧客にとっては信頼の証としての意味を持つものとなっている。それだけに、ブランドに育て上げるのはかなり難しいが、その分、一度認知されると強力な経営資源になり、製品開発も有利に進められる。

 ブランド一と口に言っても、色々の種類がある。会社の名前そのものも立派なブランドとして機能する。例えば、トヨタやルイビトンなどは、社名を聞いただけで製品のグレードが連想されるほどである。また、製品につけられたウィンドウズやカルビーなどといった名前、インテルなど最終製品に内蔵されるソフトウエアなどの成分もブランドである。

 提供する側にとってのブランドの機能は、ロイヤリティの醸成や価格の妥当性をアピールする機能、そして競合他社に対する参入障壁となる。一方提供される側の機能は、その商品を持っていることによるステータスの表現、品質保証などである。更には、これらの機能が相乗的に作用し、優秀な人材採用や社員のモチベーションの向上なども期待される。

 このように、企業にとっても顧客にとってもメリットのあるブランドであるが、いざ育てるとなると、かなり困難が伴うため、一貫したブランド戦略が必要となる。すなわち、ブレない価値を提供し続けること、その製品を提供する理由(製品コンセプト)を熱心に訴えるメッセージを根気よく発し続け、顧客の認知を勝ち取る一貫した戦略が必要である。

 いずれにしても、経営資源に制約がある中小企業にとっては、かなり敷居が高い戦略であるため、製品開発力だけに頼らず、場合によっては、OEMや完成品に内蔵される部品やソフトなどに特化して差別化を図ることである。「インテル入ってる」のCMでお馴染みのインテルは、こうした戦略に転じたことでブランド化に成功した好例であるといえる。

 以上の記述から容易に察しられるように、ブランドに育てるのは手間ひまがかかる。しかし、決して大企業の専売特許ではないことも理解していただけるであろう。大企業と対等に渡り合うようなブランド戦略は無理であっても、顧客のセグメントと付加価値の組み合わせによっては、独自の経営資源が生かした製品開発分野を見つけられる可能性はある。