既存製品市場が成熟化し始めると、その製品はコモディティ化し価格競争に巻き込まれる。そこで、製品の差別化を志向しながら市場を細分化し、競争を優位に進めるという方向に向かう戦略をとる。しかし、このような選択と集中は、本質的にハイリスクハイリターンの戦いであるため、適正な経営資源の配分を誤ると業績をかえって悪化させてしまう。
そこで、補完商品や関連商品、戦略商品を打ち出す多様化戦略にシフトすることになる。つまり、単一事業内での多様化を深めることで、リスクマネジメントを図っているということになるわけであるが、特にリスクマネジメントを意識しなくても、当然、ある意思決定の裏には、得るものと失われるものが混在するので、リスク対策は織り込まれている。
このように考えると、「選択と集中」と「多様化」は、決して別次元のものではなく、むしろ補完的なものとして捉えるべきものである。すなわち、顧客ポートフォリオ戦略は、多様な顧客層をポートフォリオ化してマネジメントすることに他ならないから、ブランドをポートフォリオ化する戦略、社員をポートフォリオ化する戦略のベストミックスである。
こうした営みは、日常、PDCAサイクルを回しながら日々態勢を入れかえていくことで築き上げられていくものである。別の言い方をすれば、この形は仮説検証サイクルそのものであり、計画と実績の差異を分析することで、多様化戦略のヒントが得られる。これこそが小さな経営革新であり、マネジメントの基本中の基本ともいうべき中核機能である。
いわゆる成功している企業は、こうしたPDCAサイクルを回す仕組みが確立されており、市場の成熟状態に着目し、主力商品の競争力、補完商品や関連商品の開発といった多様化戦略をミックスしながら、機を見て戦略商品の開発に踏み切るなど、絶えざる経営革新を実践している。つまり、漠然と結果だけに目を落としているわけではないのである。
「こんな美味しいものが売れないはずがない」「こんないいモノは他にはないはずだ」という思い込みも時には必要であるかもしれない。しかし、ビックデータの時代といわれる現在、顧客が求めている付加価値を中核に据えた発想でなければ通用しない。つまり誰と誰が、お金を出してそれを買う価値があると評価するかが、顧客セグメントの基準になる。