市場が成熟化すると、既存製品に改良を加えて市場の深耕を試みる。その一方で、既存製品の仕向け先を求める市場開拓戦略が採られる。それでもまだ経営資源に余剰がある場合は、多角化に踏み切る。これがアンゾフの成長ベクトルであるが、実際には、市場をどのように定義づけ、自社の事業領域をどのように設定するかによって異なるものである。
市場戦略と財務戦略は表裏一体の関係のものであるから、採りえる市場戦略も目標の設定に沿うことになる。一般的にいって、市場を大きくとらえれば、それだけ市場から得られる情報は大雑把なものになりがちであり、特定のニーズに絞り込めば、濃密な情報を入手しやすいものになる。全体市場の中で自社の領域をどのように設定するかがカギとなる。
顧客のセグメンテーションを、全体市場をターゲットとして設定すれば、その一部に焦点を当てた戦略に対しては手薄にならざるを得ない。その間隙を突くことができるのが、中小規模企業の狙うべき戦略である。そうした意味で、顧客のセグメンテーションをどのような角度から区分するかは、マーケティングを展開する上で大きな課題となる筈である。
しかし、むやみに特化して絞り込めば、それだけ競合企業も少なくなるが、全体のパイも小さくならざるを得ない。市場細分化には無数の切り口があるといっても過言ではないと思うが、地域、取引額の大小、流通チャネルなどによりセグメントした場合は、競合企業と重なるので、顧客ニーズよりも自社の業務上の都合に合わせたものと何等変わりない。
また、ライフスタイルなどを基準にしたセグメントも、理論上は明確であっても、顧客にとっては必ずしも魅力あるものとして認知されにくい。例えば、あるライフスタイルに焦点を当てたセグメントにより、こだわりのコンセプトで店づくり、商品づくりに徹したとしても、顧客が待ち合わせのために便利な店として利用していれば、あまり意味がない。
顧客をセグメントするということは、自社の業務の都合を優先するのではなく、顧客の求める付加価値を基準にしなければならない。この付加価値を高めるのに相応しい業務遂行プロセスを開発すべきもので、その逆ではない。その意味では、人と組織の新しい結びつきという革新的発想が伴わなければ、顧客セグメントによる差別化戦略は機能しない。