製品多様化戦略

 

 既存市場が成熟化してくると、余剰資源を活用して新製品を開発し、他の市場でマーケティングを展開するのが多角化戦略である。つまり、「新しい市場に新製品」をというのが多角化である。これに対して製品多様化戦略は、既存市場に多様な付加価値を付した製品を投入し、市場ニーズを深く掘り起こす市場浸透戦略の一つに位置付けられるものである。

 市場浸透戦略といった場合、原則として既存の製品で既存の市場に浸透させる戦略を指すものであるが、現実には、そうしたことは難しく、何らかの差別化を織り込まなければ、市場を掘り起こすことはできない。もちろん、販売方法や他の収益モデルを開発することも含まれるが、ここでは、あくまでも既存製品の発展型で勝負することを考えてみよう。

 そこでまず、製品の多様化の方向であるが、典型的な形としては製品の改良である。市場が成熟化しているという前提で考えると、差別化というほどではなくても、何らかの差異が認められれば、顧客に乗り換えを促す要因の一つになり得る可能性がある。こうした戦略に徹することで、市場に存在する余剰利得を確保し、成長した企業も見受けられる。

 また、製品の仕様や基本機能はそのままにして、新しい仕向け先や新用途を開拓するという方策も考えられるし、仕向け先のニーズに合わせて、仕様を変更するという戦略もある。例えば、本来は子供向けである漫画を大人向けに仕立て直し、新たな市場を開発するなどや、大人向けの宝飾品を子供向けにするなども同じ発想の多様化戦略であるといえる。

 さらには、日本古来の風呂敷という製品を、ベットカバーや壁掛けなどに用いるという新用途開発も視野に入れるべきであるし、寒天などの伝統食品製造のノウハウを活かして「イナゲㇽ」や「ウルトラ寒天」といった新製品を開発し、その結果、外食、介護、バイオ、医療、化粧品にまで多様化し、新たな顧客層の拡大に成功している企業も存在する。

 選択と集中とは、あるものを選択してそれに集中して取り組むという、当たり前のことであるが、成熟化した市場にただしがみついていれば必ず成功するという意味ではない。バブルがはじけたころには、やはり「本業重視」だと声高に叫ばれだが、その言葉に耳を傾け、選択と集中を実践した企業が生き残ったかというと、必ずしもそうはならなかった。