残存者利益獲得戦略

 

残存利益獲得を意識した戦略であったかどうかは別にして、生き残ったことで存在感が大きくクローズアップされた企業は結構多い。これは、もともの市場規模が小さく、過当競争が常態化していたことが原因で、財務体質の弱さがもろに反映して市場からリタイヤを迫られたという企業が多いなか、何らかの事情で生き残ったという企業も含まれている。

 しかし、代替品などの登場で、需要そのものがなくなってしまったものもあれば、原材料の調達やコスト構造から競争力を失い撤退せざるを得なくなった企業もある。このように様々な変化の中でも、何とか体制を入れ替えて生き残ってきた企業には大きな共通点があるように思われる。それは、やはり自社のポジションを明確に把握していたことである。

 具体的には、自社の財務目標を達成するための戦略と、市場目標を達成するための戦略が整合していることを見据えていたということである。例えば、石油ファンヒーターの「ダイニチ工業」は、エアコンやエコキュートなどの普及により、大手電機メーカーが次々に撤退するか、専業メーカーとして生き残り、現在はシェア50%以上の企業に成長している。

 小規模の企業でも、残存利益を獲得することで、生き残っている企業は多く、これらの企業は「残福産業:残り物には福がある」というわれ、この福を有効に活用し、新たな製品開発に繋げている企業もある。前回は、OEMやファブレス企業の成功例について記述したが、企画・設計・生産まで一貫しい自社で行うという強みを活かしている企業もある。

 このように見てくると、意思決定が遅れてしまい、図らずも既存の業界に留まったことが功を奏して「残存利益」を獲得することになった企業も確かにあるが、この機を利用してトップ企業に躍進した企業は、前述のように自社のポジションをしっかりと見据え、強みを活かすと同時に、弱みを克服する手立てを講じていることは間違いないところである。

 残り物に福があるといえば、かつての地下足袋産業を思い浮かべる経営者もいるに違いない。安全靴に取って代わられ、次々に撤退した同業者をよそ眼に、生き残った企業は、原料の調達はフィリッピン、製造は中国、そして企画は日本の本社で行うというスタイルであった。形態はそれぞれ異なるが、顧客の価値基準と優先順位の変化に着目している。