同業基盤(商品・インフラ)活用戦略

 

同業者の商品やインフラを活用する例として挙げられる代表格は、アスクルのビジネスモデルである。このモデルは、あらゆる場面で登場したので、ここでは詳細には述べないが、中小企業が自社のポジションを明確に把握することで見えてくるという点では、比較的身近に感じられるという意味で、もう一度そのモデルの開発プロセスを辿ってみよう。

アスクルは、1993年にプラスの新規事業として開始されたが、この時点では、中小の事業所が抱えている悩みを市場のニーズと捉えるという比較的単純なものであった。そのため、プラスの商品のみを取り扱っていたが、顧客サイドから、他社商品も扱ってほしいという要望があり、これに応え、その翌年には他社商品の取り扱いを開始することになった。

このビジネスモデル開発に至った強い動機は、顧客にとっての利便性であり、「購買代理人」というスタンスにあったわけである。自社の製品を少しでも多く販売することに軸足を置いた発想では、顧客の利便性に応えるといっても、同業他社の製品を取り扱うという発想は生まれてこなかったように思われる。当時の業界にとっては、「非常識」であった。

アスクルは、まず、「顧客が抱えている潜在ニーズに応えるためにはどうすればよいのか」という顧客接点機能について考えわけであるから、自社の製品だけに拘っていては、顧客との良好な関係を築くことはできない。そこで、着目したのが地域の小売店との提携であった。アスクルでは、これらの小売店を「エージェント:代理店」と位置つたのである。

そして、これらのエージェントに新規顧客開拓、売掛金の回収を依頼し、カタログの発想、受注、配送、問い合わせ対応などはアスクル側が行うという役割分担にした。アスクルは「直販」という業態を取っている以上、地元の小売文具店は競合相手ということになる。しかしこのように提携することで、競合関係が協働関係に生まれ変わったわけである。

これは正しくコロンブスの卵的発想である。というのは、こうした考え方ややり方はどこの産地でもあった。しかし、残念なことに「購買代理人」という思考が欠落していたため、同業者からはあまり歓迎されなかった。すなわち、資本力のある企業の一人勝ちを助けるという「下請け的形態」であったため、システムとしては未成熟であったのである。